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銀時&新八(NOT腐)新八視点



ザザーッ…
ザザーッ…

海岸で、珍しく神妙な顔付きをしている銀さんを見つけた。

そっと後ろから近づいた僕に気づいても、海から視線を外さない。

本当は何を見ているんだろう…?

何が見えているんだろう?

僕には見えない、悲しい“何か”だろうか…。


「この空の向こう、この水平線の向こうって、何があるんでしょうね。」

わざと明るく声をかけたら、フッと軽く笑った気配がする。

「…そりゃおめぇ、」

クイッと顎を上げて空を見上げ、銀さんは眩しそうに目を細めた。
「でっけー宇宙(そら)が広がっててよぉ、世界一バカな商人が居んだよ」
いつもの気弛い口調で、でも少し嬉しそうに言う。

「でもってよぉ、ぱっつぁん…。」
「あ、はい。」

クルリと僕の方を振り向いた銀さんは…それはそれは見事なくらいの半目…。

「…ばっかだなーお前。」
「ちょ、いきなりなんスか!失礼で―――」
「地球ってのは丸いからよ。地平線の向こうには、テメェの背中があんのよ。わかる?駄メガネくぅん。」

そう言ってニヤリと笑ってから、フッと目もとを緩ませる。

「…?」
「だからよ。テメェで見ても恥ずかしくねぇように、真っ直ぐ歩いてなきゃなんねーのよ。」

ポンポンと軽く頭を叩かれた。

「でもよー。最近はいつも後ろにチラッチラチラッチラお前らが居て、銀さん自分の背中がちっとも見えません。」
「…?」
「…でもまぁーその、アレだ…。」

今度はボリボリと自分の首元をかく。銀さんの癖だ。…照れ隠しする時の…。

「おめぇらのショッボイ背中見えんのも、まぁ結構……面白ぇ。」
「銀さん…」
「バカっぽくてよ。」

またニヤリと笑われた。
「もー!僕なんかいっつも目の前に、“バカ”でっかい背中、見えてんですからね!!」
「あーそーかい。」
そう言って、興味なさそうに背を向け歩き出す。

僕は知ってる。
今ちょっとだけ、ちょっとだけ銀さんが嬉しそうな顔をしてるだろうって事。

ちょっと俯き加減で、ちょっと笑ってるだろうって事。

だから僕も同じように笑って、銀さんを追い掛けた。

僕はこれからも、貴方の背中を見て、進んでいきます。

この世界一バカな侍の

この世界一ちゃらんぽらんな侍の

この世界一あまのじゃくな侍の

世界一大好きな、この背中を。

[終わり]

拍手ありがとうございました!
2012.11.4 エル


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あきゅろす。
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