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(ほんのりR15です^^;)


「銀ちゃん」
新八が帰った直後、ソファにうつ伏せで寝転んでいた神楽に名を呼ばれ手元のジャンプから顔をあげた。

背後の窓からオレンジ色の光が降り注ぎ、神楽の表情を隠している。
けれど、今日一日どことなく元気のなかった様子と声のトーンから何か思いつめているのが手に取るように分かってしまった。

「あー?」
心配している素振りを見せれば、きっと本心を隠してしまう。
ガキとは言え女ってのは面倒だ。

「ねぇ、銀ちゃんは……」
「なんだよ」
「私と新八とどっちが好きアルか!」

「……はぁ!?」

どんだけ深刻な悩みかと思ったら、何だそりゃ。
そんなもん、
「好きも何も、お前らは家族みてぇなモンだろ。それ以上でもそれ以下でもねぇよ」
当たり前じゃねぇか。

「そんなジャスタウェイみたいな説明嫌アル!」
「いやいや。お前とジャスタウェイ、意外と似てるよコレ。爆弾……ぐはぁっ!」

ボタボタボタ……

なんか顔面に飛んできたぞ?
あ、鼻血。

鼻先を手で抑えながら文句を言おうとして席を立つ、が、すぐに戦意を失った。
……泣いて、る?
てか、泣きたいのは銀さんの方なんだけど。

ったく、なんなんだよ、一体。

紙縒り状にしたティッシュを鼻に詰めてから神楽に手をかけると、ビクリと肩を震わせ、見上げた顔には大粒の涙が浮かんでいた。

「どうして急にンな事聞くんだよ」
「だって、だって……銀ちゃんと新八の方が……仲がいいネ……」
「へ?どの辺が?」
「新八より私の方が強いから、昔は私が銀ちゃんを守ってたアル。でも銀ちゃんは、最後はいつも新八を頼りにするようになったネ。私は女だから、連れションも出来ないネ……」

連れション、関係なくね?

「んなこたァねぇよ。考えすぎだろ」
「じゃぁ、私の方が好きアルか?」
「さっきも言ったろ。二人とも大事な家族だ」

あやすように軽く頭を叩くと、ぽんぽん、ではなく、グキッと嫌な音がした。
「あででででで!」
指が、指が……
「折れたァ!折れたよコレ!だって変な方向に曲がってるもの!あり得ないものーっ!」

「銀ちゃんの…」
「へ?」
「銀ちゃんの、銀ちゃんなんて……この、尻軽オトコォォォォォォォ!!」
「ぶべらっ」

右ストレートが顔面に炸裂し、体が宙を舞う。
視界一杯に広がる鮮血。
鼻に突っ込まれていた筈のティッシュも宙に舞った……。


「で、この有様か」
「そうなんです……」
「テメェも不器用な奴だな。嘘でもいいから“お前が一番だ”って言ってやりゃよかったのによ」

赤く腫れた指に土方がくるくると器用に包帯を巻いていく。
丁度近くを巡回中だったらしく大きな物音に驚いてやってきたと言うが、ストーカーゴリラ並みのタイミングじゃねぇか。

まぁ、いいけど。

「ンなこと言ってもよ。それで今度は新八まで鼻曲げたらどうすんだよ」
「鼻じゃなくて、臍、な。鼻曲がってんのはテメェだろ」
「痛ッ、摘むな」
「くくく……悪ぃ悪ぃ」

「あー……でもなんか、意外」
「何がだ?」
「土方君の事だから“何言ってやがる、俺が一番に決まってんだろ”とか言うと思った」
「……ほら、終わったぞ」
「お、サンキュー。流石手馴れてんな」
「テメェほどじゃねぇよ」

指に巻かれた包帯は、土方の性格を現すかのように寸分違わぬ間隔で綺麗に巻かれ、真っ直ぐ切られたテープで止められていた。
きつ過ぎず、緩過ぎず。これなら木刀を持つ事も可能だろう。

カチッ
ふぅーっと白煙を吐き出しながら、一仕事終えましたみたいなドヤ顔する土方に笑みが漏れた。

「俺ァよ……。テメェの中で一番じゃなくてもかまわねぇんだ」
「……へぇ、意外」
「俺の中でテメェが一番。それで良いんだよ。ふぅーっ……」
「……モテる男は言う事が違うねぇ」

嘘付け。
一番は真選組だろうが。
でも。

「嬉しい、だろ?」
「ばッ……別に嬉しかねぇよ!!」
「顔、赤いぜ?」
「夕日のせいですぅー」

一々どや顔しやがって。さっきの俺の眩い笑みを返せコノヤロー。

「ま、俺は……そうだな。テメェん中の3番手で十分だ」
「残念でしたー!定春がいるから三番手にすらなれませんー」
「なっ、犬の下かよ」
「定春は大事な家族ですぅー」
「マジか……」

あの……。タバコ持ったままガチで落ち込むのやめてもらえませんかね。
ソファ、焦げそうなんですけど。

結局コイツも面倒くせぇ奴じゃねぇか。
ったく、どいつもこいつも世話がかかる。

「……比べられるモンじゃねぇよな。ホントのところ。あいつらは俺の家族で唯一無二だし、 土方君は……別の、唯一無二……だったらいいのになー」
「そこは言い切れよ。テメェの心の問題だろ」
「いやいや、自分の心ってのが意外と一番わからねぇモンじゃね?」

けど。
「キスしてくれたら、わかる、かも?」
「え?」
「ホレホレ。怪我してるからチャンスだぜ?今ならお前の事、思い切り突き飛ばせねぇ」

ジュッと音を立てて火が消える。
オイオイ、いくらチャンスとは言え茶かけて消してんじゃねぇよ。

「わかりました一番です、って言うまで止めねぇぞ?」
「どーぞ?」
「くくっ。余裕ぶっこいてられんのも、今の、うち――」

くちゅっ

自ら口を開き、苦い舌を受け入れる。
口腔内いっぱいに広がるタバコの味に、顔が歪むのは一瞬。

怪我した指を庇いながらソファに手を付き背を反らせば、土方の重みでゆっくりと体がソファへ沈んだ。
はぁっ……と息継ぎする頃にはもう、脳天までびりびりと電流が奔って理性が掻き消され……。

「ふ、ぁ……っ」
「万事屋……」

早急に開かれていくインナー。
熱を帯びた掌が、素肌を這う。

ガチガチになった互いのモノが密着して重なり、ジワリと下着を濡らした。
どちらともなく下半身へ手が伸びて、僅かな隙間から直に滾るモノを掴むと、

ん……ッ

口腔内に互いの声が広がる。
その声が合図となって、包み込んだモノを扱き腰を蠢かせあった。
まるで競うかのように。



「ひじ、かた……も、う……」
「積極的だな。そんなにキモチイイか」
「アホ。下手糞過ぎて……足んねぇ」
「そうかよ」

忙しなくベルトを外す音が響く。
カチャカチャ
カチャカチャ

ガラガラガラ

「銀ちゃんただいまヨ〜」

「!?」
「!!!!」

「銀ちゃん、さっきは悪かったヨ。ごめ――」

「か、神楽ちゃん、お、お帰――」
「こんの……尻軽オトコがァ!最低ネ!最下層ネ!淫モラルネ!」
「か、神楽ちゃん。こ、これはその――」
「しばらく私に近づかないで!!」

ガラガラッ!
「クソが!」
ピシャンッ!

……さ、最悪だ。

「土方くぅん、どうしようコレ」
「しゃぁねぇ。とりあえず、ヤッとくか」
「ソッチを“どうしよう”って意味じゃねぇぇぇっ!!」
「ぐはっ」

股間に膝蹴りをかまし土方を吹き飛ばすも、ぴょんぴょん跳ねながらまたも覆い被ろうとしてきた。
股間も既に再起動済みだ。無敵か!

「テメエなんかランク外だ!!」
「ランク外から一気にごぼう抜きしてやるよ」

なんでどや顔!?
唯一無二じゃなくて遮二無二か、コノヤロー!

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拍手、ありがとうございました!!
2013.3.7 エル


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