SILVER SOUL 第25訓 似てる二人はすれ違う 9 -完結- 正直言って、驚いた。 露になった細く括れた腰、柔らかく膨らんだ胸。 まるで目の前に、女神が光臨したかのような美しさ。 刻まれた傷の数々は、 銀時の生きてきた魂の証が形になって現れているようで、 抱きしめたくて堪らなくなった。 了承を得て、後ろから手を回すと 拒否されることもなく、逆にホッとしたかのように力が抜けて 俺の存在を受け入れてくれていると感じた。 全てが、嬉しい誤算。 だが、その後、銀時の口から語れた言葉は 俺の思いに対する答えなどではなく 悲しい、誤算。 驚愕の真実だった。 総悟が来た時、女ではないかと聞かれ 体目当てなのではと誤解し、体を差し出そうとしたのだと言う。 何故、そんな事をしたのかと尋ねたら 顔を歪ませ、体を震えさせながら、嗚咽を漏らした。 銀時を抱きしめる腕に力を込め、 大丈夫、大丈夫と耳元で囁く。 『きっと、俺の事、嫌いになるよ・・・。』 そう呟いてから、ゆっくりと、次の言葉を紡ぎ始めた。 幼い頃、忌み恐れられていたこと。 女と判るや否や、体目当ての野郎共に 何度も屈辱的な目に合わされたこと。 やがて成長と共に、身を守る為、そういう輩を殺してきたこと――― まだ、十にも満たない年だったそうだ。 それから幼い銀時は、男に扮するようになり しばらくして後、恩師に拾われた。 そこで愛情を注いでもらい、初めて人としての尊厳を与えられ 戦争の最中に初恋を経験し、愛されることを覚え、今の自分がいるのだと・・・。 自分を綺麗だと言ってくれたのは、その初恋の相手を除いて 俺だけなのだと、涙をボロボロと溢しながら必死に伝えてくれた。 「さっき土方は綺麗だって言ってくれたけど、本当は俺、もう、とっくに穢れてるんだ・・・。」 「んなこと、ねぇよ・・・。」 「だって、あいつ、ら・・・俺を・・・しといて・・・『きったねぇ』・・・って、言ったん、だよぅ・・・。」 そう言って、全てを吐き出した銀時は、その場に崩れ落ちる。 ごめん、ごめん、ごめんと何度も謝罪の言葉を口にしながら。 「銀時・・・。」 ふわふわと柔らかい銀髪に、顔を埋める。 こんなに綺麗なこいつを、こんなに優しいこいつを こんな気高い魂をもったこいつを・・・己の欲で傷つけ、きたねぇと抜かした奴等・・・ 出来ることなら、今、俺がこの手で殺してやりてぇ。 でも、それは叶わぬ事で、そんな事をしてもこいつの傷は癒せねぇ。 俺に出来ることは、今から俺に出来ることは この先ずっと銀時の傍で、こいつを愛して、愛して、愛しぬいてやることだけだ。 「ごめんな、土方。だから、俺、お前の思いに・・・応えられねぇ・・・。」 「・・・それは裏を返せば、お前も俺を好いているって事か?」 「・・・・・・。」 だとしたら、迷いなどあるわけねぇだろうが。 「銀時、俺の話を最後まで聞けな?」 「・・・・・。」 「俺は、お前に愛される事を教える最初のヤツになりたかった。 正直、その男にヤキモチ焼いてる。その男、気に食わねぇけどよ。 けど、たった1つの点においては、そいつと気が合いそうだ。 銀時、俺も同じだ。お前の事やっぱり綺麗だって思うよ。」 「土方・・・。」 「そいつとの事は、お前にとって大事な歴史だから、悔しいけど、でも大切にしろ。 心の奥にしまっといてくれりゃぁ、それでいい。それより前にあった事は、難しいかも知れねぇけど、こう考えろ。 悪い夢だ。怖い夢だ。そうやって脳を騙せ。時間はかかるだろうが、俺が傍に居てやるから。 ずっとずっと傍に居て、お前を愛して、ただの悪夢に変えてやる。そしていつかきっと、消してやる。一緒に、消してやるから・・・。」 「ひ、じか、た・・・っ。無理・・・そんなの・・・無「無理じゃねぇ!」・・・っ。」 「無理じゃねぇ・・・諦めるな・・・俺が一緒に戦ってやるから。」 「うっ・・・ううっ・・・。」 「銀時、愛してる。お前の心も体も魂も。ちっとも穢れてなんていねぇ、汚れてなんていねぇ。お前は綺麗だ。」 「土方・・・だって―――。」 「何度でも言う!!お前は綺麗だ、綺麗だ、綺麗だ、綺―――」 「っ・・・うわぁぁぁぁぁーっ」 振り向いて抱きついてきた銀時を、強く強く抱きしめる。 泣きたいだけ泣いて、全部吐き出しちまえ。 俺が全部、受け止めてやるから。 いつまでもこうして、抱きしめていてやるから。 幼い頃のお前を助けてやることは、もう出来ないけど お前が愛した最初の男にもなれねぇけど でもこっから先は、俺がお前を守ってやりてぇんだよ。 だから、最後に1つだけ。 お前の口から聞かせてくれ。 今の、本当の、気持ちを・・・っ 「・・・き・・・土方ぁ・・・す、き・・・大、好きだよぉぉ・・・っ。」 「俺も、だ・・・銀時、お前を・・・愛してる・・・。」 「ひ、じ・・・ッ・・・おれ、も・・・っ―――う゛う゛っぁぁぁああああ・・・っ」 涙でぐちゃぐちゃな顔をあげた銀時が 顔を寄せて目を瞑る。 「いいのか?」 コクンと頷くのを、しっかりと見届けてから 熱くてしょっぱい、初めての口付けを交わした。 何度も、何度も、 銀時の涙が止まるまで―――。 そして俺達は、心も体も、一つに溶け合う 長い長い、夜を過ごした。 銀時の闇を、光で包み込むように―――。 「眠い、アル。」 「遅いですね、二人とも。」 「しっぽりやってんだろィ。いい事じゃねぇか。野郎はムカつくけどねィ。」 「マヨラの事なんてどうでもいいアル。銀ちゃんが幸せならそれが一番ネ。」 「笑ってて欲しいです。銀さんには。大事な家族ですから。」 夜が、明ける。 暗闇に、希望を乗せた眩い光が差し込んで 闇に紛れていた雲が、銀色に輝き始める。 神々しいまでに気高く、そしてふわふわと柔らかい銀色の雲。 それは――― 「あ!銀ちゃん!!」 「銀さん!!」 「迎ぇに来たぜ、さぁ、帰ぇるか。」 ―――どこまでも、優しく、美しい。 END ----------- 終わったー!長かったなぁ! 上手く纏まったかなぁ。色々繋がらないところも未熟なところもあると思うのですが 頑張ったで賞くらいは、取れたかな?どうだろ。 銀ちゃんは、皆に愛されて これから誰よりも幸せになってほしい。 この話の中でも、勿論、原作でも、です。 このお話が少しでも、読んでくださった方に幸せな気持ちを与えれますように。。。 お付き合い、ありがとうございました。 PS 端折った「夜」部分、R18指定になりますが、書きますので! もし興味がありましたら、そちらも是非、お待ちくださいませ。 2012.10.4 エル [*前へ][次へ#] [戻る] |