「はい、ボス」

しっかりと物を抱きかかえてにやけそうになる顔を必死に引き締め、部屋に入ってすぐさまそれをボスである沢田綱吉に押し付けた。

「えぇ!?なに、いきなりっ?」

突然だったためにびびったのか、わたしが持ってきたものを彼はしっかりと抱き締めている。よしよし。やっぱり。わたしは今度こそ押さえきれずににっこりと笑った。

「やっぱり!やっぱりボスに似合ってる!わたしさすが!」

想像以上の似合いぶりにわたしはいっきに興奮してしまった。わたしだけ見るなんてもったいない!他の人も呼んでこよう!それとカメラカメラ!

ボスはわたしが叫んでしまった言葉を聞くと、とたんに微妙な顔をした。ああ、もったいない!

「いきなりくまのぬいぐるみを押し付けてきたと思ったら、似合ってるって…どういうことだよ、てか、全然嬉しくないんだけど!」

ボスはぬいぐるみをぺいっと脇に放るとわたしが来たときと同じ姿勢に戻った。少し気だるげにしながら机についている左手に顔をのせ、半目になりつつ右手はさらさらとイタリア語をつづる。

う、とわたしはその切り替えのすごさにつまりながら、どうしてですか、と変に興奮したまま言った。

ちらとボスはわたしを見る。

「ぬいぐるみが似合うってことはかわいいってことだろ」

「いいじゃないですか!ぬいぐるみが似合うのは選ばれた人しかいないんですよ!」

例えばわたしなんかが抱きついてたりしたら、ちょっと精神的にキちゃってる人に見られますし!

ぐっと拳を握って力説すると、ボスはそっとまぶたをふせて溜め息をついた。

「あのなぁ…それって人それぞれの価値観の違いだろー?男にぬいぐるみなんか、それこそ気持悪がられるって」

そもそもなんでくまのぬいぐるみなんだよ。

そこまで言うとまたさらさらと何かを書き始めた。むう。

「ぬいぐるみは買い物してたらボスに似合うだろうなーって思って、そしたら思わずかってしまったんです!ってそんなことどうでもよくて!今からみなさんをお呼びしてきますから、似合うかどうか証明してもらいます!」

わたしは一気に巻くしたてると寝っ転がってるくまをかっさらった。

「なぁ!?何言ってんだよ!そんなことしなくていいって!みんな忙しいだろうし、そもそもそんなことで集まるわけないだろ!」

がたん、と大袈裟にボスは起き上がり、わたしを止めようとする。しかしわたしはさっさとドアの前まで来ていた。

「ボス、みなさんのことを分かってないんですね」

にやりとボスに笑みを向ける。こんな素晴らしいアイデアに食い付かない人がいましょうか。

捨てゼリフをはいて、わたしは部屋をでる。固まったままのボスを残し。






愛されてます。
(だいたいなまえ以外の人に見られたくないって!)


みんなを呼び、部屋に戻るとそこにボスはいなかった。

これは由々しき事、とボス失踪事件とわざと大々的にファミリーに知らせ、間もなく捕まったボスは捜索に関わったすべてのファミリーの面前でぬいぐるみを抱くこととなった。

もちろん、ブーイングをした人は一人もいない。

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