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久しぶりの休みの日。

アジトの廊下にあるテラスで、そろそろ昼になるという明るい太陽に照らされて、心地よい風に吹かれながら、庭を眺めていた。庭は、庭師がよく手を入れていてそこかしこに完璧な花が咲いていてとてもきれいだ。
遠くから鳥がさえずる声が聞こえ、噴水がザーと水をあげている。

そろそろお昼ご飯の時間だ。食堂に行けば、もはやむさくるしい男たちであふれていることだろう。なんせ腹をすかせた大食らいたちがたくさんいる。

そこまで考えて、自分はまだそんなにお腹がすいていないから、人がだいぶ引いたところを狙って行こうか。そう考えたとき、ため息が出た。

「今日は何して過ごそうかなあ…」

今日の最大の問題はこれである。




わたしの仕事の担当は街の治安を見守ることである。どことどこがけんかしたとか、高すぎる値段を設定したとか、人様から見ればいいとはいえない取引をしているか、主にそういうことを見て問題をほかのメンバーと解決に導き、報告書を書いてボスに提出している。

報告する必要があるのはだいたい街の経済関係だが、暴力事件とか、おめでたい話とかもよく仕入れる。ようするには街に密着したおまわりさん、みたいなものだ。たぶん、初代ボンゴレが目指した自警団の形に近い。

そんな仕事だから、わたしは普段から街に出ていて、人々とのかかわりが多かった。だから家でこんなにじっとする予定があるのはめずらしい。ほとんどないと言ってもいい。

「なに、しよう…」

だから、結局ここに戻ってきてしまうのである。

わたしは趣味をもっていない。毎日仕事が終わって、疲れていても、時間がなくても絶対にこれがやりたい、というのがない。

昔は、こんなに毎日が仕事で充実する前は、なにをやっていたかなあ、と思い出してみて、本を読むことが好きだったのを思い出した。

つらつらと文字がひたすら並んでるだけの紙を思い出し、目の前のいい天気を眺める。どうしても、読書日和というものではない。散歩しようぜ!と自然に誘われているみたいだ。

「買い物に行くか…」

結局今日も、街に行くことにした。しばらくぼーっとして、そろそろお腹がすいてきたな、と思い、腕時計を見ると1時だった。さすがにこの時間は人が少なくなっているだろう。

さて、と立ち上がり、建物に入ろうとすると、窓際に肩をあずけたボスが立っていた。

「あれ、ボス?こんなところで何してるんですか?」

片手に10センチの厚さはある書類を持って、くわえタバコをしたボスは、にっこり「買い物に行くって言う言葉が聞こえたから」とのたまった。

答えになってない。

「あの、ほんとにどうしたんですか…?」

はっ!もしやサボろうとしているのでは、と思いいたったとき、失礼な、なまえとは違うよ、と言われた。

「俺は、仕事はまじめにこなしてるからね」

「ちょ、どういうことですか!わたしだってまじめに仕事してますっ」

思わずむっとしてしまうと、ボスの顔から笑みがこぼれた。

「この前、そのまじめな仕事をしていながら、猫のぬいぐるみを買ってきてたのはどこの誰だったかなあ」

「うっ…ねこは、ねこは仕方ないんですっ」

力をこめて反論してみたが、ボスはひょうひょうと笑っているだけだ。あのかわいさが分からないのか…。そこが残念でならない。

「どんな理由だよ」

ふはは、とボスに笑われながら、どう反論したものか、と考えあぐねていると、ぐうううとわたしのお腹がなった。とっさにお腹を押さえる。

「ご飯食べたのにもうお腹すいたの?」

「違いますっそんなわけないじゃないですか!」

まだお昼食べてないんです、と恥ずかしくなりながら言うと、くすくすとおかしそうにボスが笑った。たばこの煙がゆらゆら揺れる。

「奇遇だね、俺もまだ食べてないんだ」

手に持っていた書類を肩に担ぎなおしてボスが言う。

「一緒に食べに行こうか」

「あ、はい」

「じゃあとりあえず、これは部屋においてくるから」

人差し指でぽんぽんと書類をたたき、「着替えてきて」歩き出しながらいった。

「はい。…はい?」

なんで着替える必要があるんだろうか。あわてて、ボスの後を追いながら訊く。少したばこ臭い。

「外に行くよ。それにほら、なまえってば休みなのにそんなかたっくるしい服着てるし」

下を向いてみる。確かに、仕事着とあまり変わらない、シャツを主役に持ってきた服装だ。

「せっかくの休みなんだから、もっと楽しまなくちゃ」

いつもの微笑とは違う、いい笑顔、だった。なんか、かっこいい。

「そう、ですね…じゃあ着替えてきます」

・・・ん?

「って、ボスは仕事あるんじゃないですか!?」

「やだなあ、息抜きぐらい大丈夫だよー」

にこにこ笑って、ボスは部屋に消えた。本当にいいのだろうか…。リボーンさんに何か言われたら、ボスのせいにしよう。

わたしは久しぶりに、クローゼットの奥に押し込んであったスカートを思い出して、あれをはいてみよう、と考えた。









晴れのあたたかい日は、あなたに似合う。
(スカートはいてるとこなんて初めてみた、似合うね)


「おう!なまえじゃねーか!」

「やーねぇ、ボスを手玉にとっちゃってさすがね!」

「何言ってるんですか!わたしはボスの手駒です!」

(そういうことじゃない…)

「あ、そういえばボス、さっきリボーンさんに、こっちに来たらさっさと帰れって言っとけ、って言われましたよ」

「ほんと?じゃあ逆手を取ってここで昼食でもとろうかな」

「そうすると、5分後に獄寺さんが来るみたいですよ」

「―――じゅーーーだいめぇぇぇ…」

「うわあ、さすがリボーンさん…」

「じゃあ獄寺くんも巻き込んでご飯でも食べようか(にっこり」









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20121220
もうすぐクリスマスで、今年も終わるんですねー

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