何もない日(スレナル)


彼は仕事をすごくがんばる。

まるでそのためだけに生きているみたいに。仕事をすることで生きているみたいに。

でも、だからこそ、その仕事がなくなったときに折れてしまわないか心配になる。彼のことだし、仕事がなくなるなんて、ありえないことだけど、もしあるとしたら。

「あたしって、何のために生きてるのかな」

先に食事を終えてソファで読書している彼に訊く。

あたしはそんなに重要なことを訊いたつもりはなく、ご飯を食べながらふと思ったことをただ口に出しただけだったので、答えてもらう必要は全くなかったが、こういうとき――ほとんどどうでもいいときだけナルトは話に反応する。

「…イタチが聞いたらこういうだろうな」

イタチさんは上司で知っていたし、尊敬していたのであたしは少しだけ期待して、箸の手を止め、彼の声に耳を傾ける。

「ナンセンス」

「…」

意味わかんない、とあたしは食事を再開した。彼は依然として禁術書を読んでいる。もうあたしの意味のない話も飽きたみたいだ。

どうして生きているか、そう考えること自体がナンセンス、ということだろうか。今を一生懸命に生きろ、今を生きるしかない、と。

考えることは簡単だがやってみるのは難しい。特にあたしなんかなるべく現実と向き合わないように生きてきたから、一生懸命に生きることは難しい。もしかしたら、現実とそうでないものの区別もまだついてないかもしれない。

でもそうやって一生懸命に生きていくうちに何か自分の価値を見つけるかもしれない。見つければそれに生きていけばいいし、見つからなければあたしの人生はそれまでだということだ。――そうするつもりなんてさらさらないけど。

「ね、ナルト。あたし、火影さまに暗部に入らないか誘われてるんだけど」

やっと食べ終わった食器を少しずつ片付けながらぽつりと話し掛ける。反応なかったらちょっと傷つくな、と思ったが、彼は禁術書を横へどけて起き上がった。

「はあ?聞いてねえぞ」

「でしょうね。あたしが言わないように言っておいたから。入る気はあまりなかったし」

わずかに驚いた顔はそれでいつもの表情になり、またつまらなさそうにソファに横になった。

「いいんじゃねえか。反対はしない。入れば鍛えてやるけどな」

「え、そうなの?じゃ、入ろうかな」

「おい、あんまり軽く決めんなよ。それこそ一番危険なところだからな」

うふふ、とあたしは笑って食器を流しに運んだ。これでいいのだ、たぶんこれだけのことでこれからのことが大きく変わってしまうだろうが。

先にお風呂洗おうか、とナルトに訊くと、後でいい、と返事がきたのであたしは先に食器を洗うことにした。








(あたしは少しだけ何かが変わったような気がします)









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…なんでもないんです、きっと…;
20080618


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