darken him(スレナル/グロのち微ギャグ)


敵の忍が一人、常人とは思えないスピードで俺に向かってくる。

彼は気合の声を上げながら、背に何かを持って、それは本来の彼より大きく見せているような気がした。だが俺はそれを無視して、向かってきた彼を切り捨てる。人の命など人が生まれるよりも簡単に消え去っていく。

頚動脈を切ったので派手な血しぶきを撒き散らしながらばたりと彼は倒れた。どこからか鋭い悲鳴が上がる。

木の上から地面を見下ろす。そこには落ちたさきほどの人間と、それを囲むようにこちらを見上げている人間達、まるで蟻のようだ。びっしりと隙間無く殺されるために集まっているそのさまは、しいて言えば滑稽だった。

その中の一人が声を上げた。助けてくれ、せめて女子供だけでも。

なぜ男だけ殺されていいのだろうか。いつもこの言葉を聞くとそう思わずにはいられない。男をやるなら、いっそともに女子供も死んでしまえたほうが楽ではないか。

俺は、しかし、何も言葉を発さなかった。何も言う必要はないし、助ける如何をどうとも思わなかった。

何をするでもなくじっと見下げる。それだけで恐怖に染められるのだろう、人間達は目をわななかせてこちらを見上げている。

暗闇だというのに血だけが赤々と光っているように見え、木の枝にかかったそれを一瞥して下におりた。

「頼む!」

「助けてくれ!!」

男どもは子供をかばう女たちの前に立ちはだかった。

それらをクナイで切ると赤の血があたりに撒き散らされてまた悲鳴が上がった。脳天を突くようなそれを振り切るように切って一人残らず、無論赤子も血の海に沈めた。



ゆっくりと目を開ける。

視界に広がったのは暗闇に浮かぶ血の色ではなく、明るい部屋だった。

たまに見るものだった。いつも変わらず、自分がただ人を殺す。

そこに感情というものはなく、こうして目覚めても何も思わない。そのことの方がむしろおそろしく感じた。

明るさにしばらく目を慣らせて窓の外を見てみる。空は青々と輝いて、今日も雨は降りそうにない。

昨日も暗部の任務があったからもう一眠りでもしようとしたらこんこんとドアが鳴った。

この気配はサクラちゃんだろうが、こんな日に何の用だろう。表のほうでは任務は無いはずだ。

玄関にむかって応対すると、サクラちゃんは、火影様が呼んでるのよ、デートなわけないでしょ、と言い放った。

しばらく待ってもらって身支度を済ませ、彼女とともに火影のところに向かった。



火影室につくと見慣れない人間が一人居た。この気配は暗部で感じたことがあるから、暗部の人間なんだろう、さしずめ今回の任務の上忍役か。

「来たか、ナルト、サクラ」

火影の前で止まりちらりと横を見れば彼女と目が合った。

「ばあちゃん、誰だってばよ、こいつ」

「そいつはヤマトの代わりの上忍だ」

ちょうどその時こんこんとドアが鳴ってサイがやってきた。

「ちょうどいい、れんげ、自己紹介を」

はい、と女は言うと、俺たちを向いた。

「れんげといいます。今日はヤマトさんの代わりに来ました、よろしくお願いします」

律儀な挨拶をすると小さく彼女は頭を下げた。

「よし、では任務内容だ。今回の任務は盗賊が奪ったさる大名の家宝を取り返すものだ、以上!」

詳しいことはれんげに話してある、という言葉を背に俺たちはさっさと部屋を追い出されてしまった。

「じゃあ一応自己紹介をお願いしようかな」

火影低を出てすぐににっこりとれんげが言った。

「まずは女の子から」

「春野サクラっていいます」

サクラちゃんね、うんうんとうなずきながらサクラちゃんの隣に居る俺を見る。

「俺ってばうずまきナルト!」

ナルトくん、とまたうなずきながらサイの方へ視線が動いて、サイです、と彼は自己紹介した。

「サクラちゃんにナルトくんにサイくんね。覚えたわ。さっきも言ったけどわたしの名前はれんげ、上忍よ」

「あのさ、れんげはいくつなんだ?俺たちとそんなに変わらないように見えるってばよ」

俺の問いにいちいちひとつ微笑んでから彼女は、そうね、と答えた。

「あんまり変わらないわよ」

えーすごーい、とサクラちゃんがひどく感心する。本当は暗部だろうがな。

しかし、この程度の任務になぜ暗部がわざわざ上忍のふりをして担当につくんだろうか。まあ身内も騙すためにはこっちのほうがいいからか。

詳しい任務内容を聞いた俺たちはさっそく任務に出た。



盗賊たちの居場所を掴んでいたと言うのでその場所に行ってみると、そこはまるで村のような小さな集落があった。

山間の静かな場所だったが人々のざわめきがどこからか聞こえてくる。人の気配も一つどころにかたまっているようだ。

「いい?わたしたちの任務は宝の奪還。まずはどこにそれがあるか、偵察しましょう」

はい、とサクラちゃんがこたえ、俺たちは無線を着けた。

「半径30メートル以内なら大丈夫よ。ここはそれほど広くないから心配することはないでしょう」

それじゃあみんながんばって、とれんげはいい、散、の合図で俺たちは散らばった。

大方、宝は人が集まっているところにあるだろう、俺は遠いところからてきとうに観察することにした。

そっと誰も居ない家の中に身を潜める。外は昼間だと言うのに霧がかった薄暗さなので、家の中はさらに暗かった。

畳の上に寝そべり、外の気配を探る。れんげは人々のところに居て、サクラちゃんもサイもおんなじようなところに居る。

たぶんれんげの無線からだろう、人の声のざわめきが無線機からわずかに聞こえ、男のような声が大きく上がってざわめきが消えた。

「――つい――われの宝が、やつに奪われた――長年の夢――」

ふーん、と俺は納得した。さすが大名が鼻息荒く俺たちに畳み掛けるだけのことはある。しかも大名がそこまで言うものだからそれなりの価値があるんだろう、あの宝には。

無線から聞こえる声が重なって大きくなった。

「ここに我々一族の復活がかなった!」

大変だった、と他の声が言い、それを皮切りにどよどよと人々が話し始める。

「確かに!」

さっきまで話していたらしい男が声を大きくするとどよめきがぴたりとやんだ。

「大変だった。しかしこれからも大変だ。きっとこのわれらが一族の宝を狙ってまた悪い輩どもがわれらのもとにやってくるだろう――。そのためにも我々は忍の一つの一族として、鍛錬を積まなければなるまい」

また別の男が声を上げた。

「そのことで長、ねずみが二匹ほど近くに居るみたいなんだが」

はあと俺はため息をついた。

無線からは金属音が響いている。サクラちゃんとサイの気配が動いたとこから、二人が応戦しているんだろう。

とりあえず現場近くに居ないのはまずいので、れんげの居る場所に向かうことにした。もう一つ、嫌な気配の固まりもこっちに近づいている、十中八九、本当の盗賊だろう。

今まで完全に消していた気配をれんげのところに向かいながらじょじょに現していく。さして遠くでもないので着くと、人々と対峙しているれんげがいた。

「サクラちゃんとサイは!?」

「ナルトくん?彼女達はたぶん戦闘中よ」

くそ、と俺ははき捨てて戦闘体制に入ると、待って、とれんげが俺を止めた。

「なんでだってばよ!」

「どうやら宝は彼らの持ち物だったみたいよ…それを大名が奪ったって、彼らは言ってるわ」

「んなの信じられるか!こいつら盗賊なんだぜ!」

すると彼らはどよめいた。

「何!?俺たちが盗賊…!?そんなわけあるか!」

そうよ、とれんげは俺の前に来て言った。彼らは盗賊じゃないわ。

「おそらく、本当の盗賊は今こっちに来てる奴らよ…。彼ら一族は盗賊に盗られる前に取り返したにすぎないのよ」

「ど、どういうことだってばよ…?」

俺がわけがわからないふりをすると一族の一人――たぶんあいつが長だろう――が、盗賊が大名の家に犯行予告状を送ったんだ、と言った。

「前前からその大名家に張り込んでいた我々は焦り、その犯行予告状の前に宝を取り返すことに決めたのだ」

「じゃ、じゃあお前らは盗賊じゃないのか…?」

当たり前だ、とその長は叫んだ。

「なんだ…まぎらわしいことするなってばよ」

ふふ、とれんげは笑った。

「でも、盗賊は諦めずにここに向かってるわ。その盗賊を捕まえないと」

任務はこれからよ、と言ってれんげは一族のほうに歩いていったのを見て、俺はため息をついた。

「めんどくせ…」

何か言った、と振り返ったれんげの腕を掴む。驚いたその顔に俺はさらにため息をつきたくなった。

「お前、本当に暗部か?こんなやつを俺が入れた覚えはないが…」

何言ってるの、とれんげは半笑いしながら俺の手を解こうとするが俺は離さず彼女を背中のほうへ隠した。

「任務にあっただろ、A級犯罪者が盗賊まがいな事をしてると」

「ナルト、くん…?」

にやり、と目の前の長が笑った。

「こいつらは盗賊だ」

「な、何を…!彼らは自分達の宝を取り返しただけ――」

はあ、と俺はため息をついた。シカマルじゃないが、本当にめんどくさい。

「もう遅い!われらの勝ちだ、木の葉の忍ども!!」

「さっさと任務終わらせよ…」

クナイを一本取り出し、素早く長の首を飛ばす。どこからか聞こえる悲鳴を耳に、襲い掛かってきた奴らを止まることなく次々に首を切っていく。

悲鳴が消えたころには、夢の中であったような、赤い世界が広がっていた。ただ夢の中と違って、自分の体についていないが、血のにおいが酷くきつい。

「な…あなたは誰!?」

れんげがクナイを俺に向けた。

「うずまきナルトだ」

「冗談はやめて!下忍がこんなことできるわけないでしょ!?」

はは、と俺は笑った。

「下忍なら、な」

おい、くるぞ、と彼女に言うと、れんげは後ろを振り向いた。

「あ…盗賊…!」

盗賊たちは俺たちの目の前に現れ、俺が殺した奴らの仲間を見て、これはどうなってる、と動揺している。

「れんげ」

ち、と舌打ちした彼女は手早く十人ほどの盗賊を全滅させるとすぐにこちらを振り向いた。ところどころに返り血がついている。

「あなたは誰なの」

今度は少し冷静になったような声色で彼女が言う。サクラちゃんとサイの気配をみてみると、まだ戦闘中のようだ。

「…まあ、暗部の烏、って言えば分かるとおもうけど」

「暗部の、烏…!?総隊長の!?」

これは決定的な証拠だろう。暗部しかこの名前を知らないのだ、一介の下忍が知るすべはもちろんないのだ。

その考えに至ったのだろう、れんげの顔色が驚きをあらわにしている。

「なんでこんなところに…?」

「だから…俺、うずまきナルトが暗部の総隊長ってことだ」

分かったか、と訊くと彼女はしばらく黙りこんで、でも、とようやく口を開いた。

「暗部の任務にA級犯罪者のことなんて…この人たちは本当に盗賊じゃないのに、こんな非道いこと許されないわ!」

「暗部の任務、言われてなかったのか?…ったくあのばばあ…」

そんなもの、言われてません、と彼女が叫ぶ。

「とにかく、こいつら全員が盗賊だったっていうことだ、サイが来るぞ」

戦闘を終えたらしいサイがこっちに向かってきていた。こいつらはお前がやったことにしてくれ、とれんげに言ったところでサイが現れた。

「れんげさん、ナルトくん…無事ですか」

「おう、大丈夫だってばよ!れんげのやつめちゃくちゃつえーってば!」

その時近くで大きな崩壊音が聞こえて、サクラちゃんが現れた。

「みんな大丈夫!?…あれ、こいつら全員、れんげさんが…?」

「そう…いや、俺もちっとは倒したってばよ!」

れんげさんすごいんですね、と笑顔でサクラちゃんが言ったが、れんげは、任務が終わったから帰りましょう、と言った。



「そうか…全員盗賊だったんだな」

ばあちゃんに報告して、解散になった。

サクラちゃんとサイは先に帰り、俺とれんげはばあちゃんに向き直った。

「ばばあ」

「火影だ」

「…ホカゲサマ、こいつに暗部の任務内容教えなかっただろ」

「…」

ばあちゃんの引き出しに伸びた手が止まった。

「…おい」

「すまん、忘れた」

「開きなおんな!」

「それよりナルト、暗部のことを言って大丈夫なのか?」

「偉大なるホカゲサマのおかげで俺の正体がばれたんだよ」

それは悪かったな、と反省の色が微塵もなかったので言い返そうとしたが不毛な争いなのでやめることにした。

「鶯、大丈夫だ、出て来い」

ひそかに近づいてここに来た気配に話し掛けると隣にシカマルが立った。暗部服をつけていない。

「大丈夫なのか?」

突然現れたシカマルに驚いているらしいれんげを指差してシカマルが言う。

「大丈夫だ、そいつも暗部だからな。れんげというんだと」

「…ああれんげか」

「な、何で知ってるんですか」

「当たり前だろ、シカマルは暗部副総隊長だからな。それより、新しい玩具ができたぞ、鍛えてやれ」

え、と声を漏らしてれんげは固まり、シカマルはにやりと笑った。

「ふ、副総隊長に鍛えられるって…う、噂ではすっごいキツイと…」

火影様、とれんげが助けを求めたが、当の人物は引出しから取り出した宝くじをまじまじと見ている。

「きついだろうな、これもお前のためだ、がんばれ」

最後の砦があっさり崩れ、れんげの顔は引きつっていた。

「大丈夫だ、俺たちが鍛えれば必ず強くなる」

ぽんとれんげの肩を叩いて俺は火影室を後にした。











・・・・・・・・・・
なんかむりやり展開させてる感があるような(^^;;;

が、がんばりました…めっちゃ久しぶりになってしまったけど;;;

一万ヒットお礼はもう少しお待ちくださいいぃぃいースイマセンッッッ(´Δ`|||
20080510
(タイトル苦し紛れ…っっ;;;)


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