太陽が沈むとき、世界は闇にのまれ始める(スレナル)

ひどくきれいな顔だった。

頬は滑らかで、傾きかけた太陽の光に呼応するように輝く金髪はきらきらと儚くきらめいている。

そっと唇から頬へとすべらせた手は目元で止まる。その見開いた眼は生前のきれいで澄み切った蒼ではなく、にごり始めた灰だった。

「っ…ナルト!」

暗部服にも関わらずシカマルがあたしの目の前の人の名前を呼ぶのは、あたしが面を外したから。

シカマルも暗部服であるのに面を外してどこかへ投げ、あたしたちに近づいた。

「ナルト!おい!」

「無駄よ、もう死んでる」

あたしはただ言った。自分でも信じられないと言うのに、まるで声だけはその言葉を知っているように。

突然、シカマルがあたしの胸倉を掴んだ。外れかけた面がからんと落ちる。

「てっめぇ…よくもそんなにぬけぬけと――!!お前が、ナルトの傷を見るんじゃなかったのか!!?」

分からない、とあたしは呟いていた。

「分からない…。あたしだってナルトを助けたかったよ!!でも…でも来たときはもうこんなでっ…!!なんでっ!!」

叫んだら何かが一気に解けて、あたしは泣いた。もうすべてがどうでも良かった。彼が居ない今、あたしの世界は闇になったと同じだ。

「クックック、ちょうどいい。暗部の総隊長が居なけりゃ、この里も落ちたと同等だ」

ナルトを殺したらしい、あたしたちより少し離れた敵が言った。

「ちょっと待って!一体何なのこれ!?なんでナルトが――死んで…!?」

「待て、サクラ!近寄るんじゃない!敵はビンゴブックのA級犯罪者だ…下手に動くと何をされるか分からない」

「それよりナルト君が暗部の総隊長ってどういうことですか」

サイは明らかに暗部服のあたしたちに訊いていた。

「確かにな…れんげ、シカマル、お前達も暗部だったのか?」

冷静を装ってカカシ先生も訊いてくる。それらにめんどくさそうにシカマルは、見たまんまだ、と冷たく言い放った。

「…れんげ、この失態は後でみっちり取らせてもらうからな…。あいつは俺が殺る」

「馬鹿言わないでよ、あたしがやる」

「ほお…お前、副総隊長に歯向かうつもりか?」

は、とあたしは鼻で笑った。

「何なら、今ここでその場所、あたしが奪ってもいいよ」

シカマルも人を馬鹿にするように笑った。

「やってみろ」

けれどあたしたちは互いに睨み合うでもなく、すぐに敵を振り向いた。

「まあ、まずは」

「敵の殲滅、ね」

あたしたちの声を聞いていたらしい敵のかしらが大声を上げて笑った。

「よく言うぜ!俺達の気配が分からなかった奴が!」

「はっ!なら俺達の気配がわかんのかよ?」

次の瞬間敵のかしらはシカマルによって捕らえられ木に縛り付けられていた。その間にあたしはそいつの仲間の下衆どもを縛り上げる。ロープをかけているとき骨の折れる音がした。

「お前らはただで死なせるつもりはない。楽に逝けると思うなよ」

シカマルが言い、ひっとサクラが悲鳴をあげた。木に刺さるくらい、敵のかしらの肩にクナイが刺さっていた。

あたしもこいつらを痛めつけようか、と思った時、抑えたような笑い声が聞こえ、あたしは思いっきり振り向いた。

シカマルも声が聞こえたほうを凝視している。そこにはくさむらに隠れていたらしいナルトが笑っていた。

「な…ナルト…!?」

サクラが一番に言った。あたしとシカマルが何も言えず突っ立って、カカシとサイは驚いていた。

「ふくくっっ…!!まさかそこまでやるとは…!」

ナルトはシカマルに近づくと笑顔でぽんとシカマルの肩を叩き、あたしに近づいてきた。

「いやぁ、れんげの涙は初めて見たかもしれないなあ」

あたしは手にもっていたクナイをぽとりと落とした。

「わ…笑い事じゃ…ない、でしょ…?」

怒りに震えすぎて、きちんと言葉を発せられない。

「本気で、死…って、思った、のにっ…!」

あたしは一番の速さでクナイをありったけ投げつけたがナルトは難なくかわしてあたしの後ろに現れ、あたしに抱きついた。

「よし、よし」

うわあんとあたしはナルトに抱きついた。

「この馬鹿ーー!今度やったら本気で殴るからねーー!!」

おーそれは死にそう、と他人事のように呟いて、近づいてきたシカマルに、あれどうよ俺の自信作、とナルトは言った。

「あの死体、な…見事にだまされたぜ」

ぎっと睨みつけるためにナルトの顔を見ると、にっこりと笑っていた。それを見ると、なんだか全てがどうでもよくなってしまった。

「…はあぁ…。なんか気が抜けた…。カカシせんせー、後はよろしくねー…」

あたしがナルトに抱きつきつつそう告げると、カカシ先生は、え、俺、と驚いていた。

「そうそう…ね、総隊長」

「ん?ああ、頼んだ、カカシ」

「がんばってくれ」

「え、ちょ、待ってえぇ!」

あれをカカシ先生が一人で出来るとは思えないのでサクラやサイが手伝わされるだろう。別に今はどうでもいいが。

辺りが暗くなり始める中、あたしたちはすべてを放置したまま火影様のところへ向かった。







(けれどあなたが死なない限り、あたしの世界は明るいまま)




















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前のやつをかたかた打ってるときに突然思いついたもの。
そのまま死ネタでもよかったんですが、なんか悲しいのはやだなと思い、ナルトのいたずらに変更しました*+
これも何気に自サイトのタイトルです☆
20080326


あきゅろす。
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