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その頃、少女――れんげは先程の男に連れられ、道を歩いていた。

「さぁ、もうすぐです」

しかし、そうはいうものの、藩邸のような大きな建物はいっこうに見えてこず、むしろ木々が多くなってきていることにれんげは不審感を持っていた。

「あの…本当にこちらであっているのでしょうか」

れんげが不安そうに男に訊くと、ええ、あっています、と答えた。

「着きました」

男がれんげに振り替えって笑う。

れんげは思わず眉をひそめた。

そこはお寺のような場所だったのだ。

周りには木が鬱蒼としげり、ひとけが全くない静かな場所で、建物もひどい荒れようだった。

そこでようやく尋常ではない状況に気付いたれんげは、くるりと背を向けた。

「どちらに行かれるのですか」

しかし男がれんげの腕を持ち、逃げるのを止めた。

「は…離して下さいっ!」

れんげはそう言って腕を振ったがびくともしなかった。

それを見た男は舌打をし、人の良い笑みを消して建物に向かって声をかけた。

「おい、縄持ってこい」

すると一人、男が縄を持って出てきたあと、何人かの身なりの汚い男が出てきた。

「文は出したか」

はい、と一人の男が答える。

はい、兄貴、と男が縄を渡す。

「しかし兄貴、演技が上手いですね」

「ふん、この女の世間知らずのおかげだ」

れんげの腕を持つ男が言うと周りの男が下品な笑い声をあげた。

それにれんげがびくりと震える。

それに気付いた彼女の腕を持つ男がぐっと彼女に顔を近付ける。

「くく…がっぽり稼がせてくれよ、お嬢さん」

その時、一人の青年が寺にやって来て言った。

「何をしている」

その声で青年が居ることに気付いた男達は一斉に青年を見た。青年の後ろにはもう一人青年がいて、彼は異様に大きな刀を背中に帯ている。

「なんだ?てめぇら」

男達の一人が言った。

彼らは静かに武器を構え始める。

その中に脅えるれんげを見付けた青年はわずかに目を開いた。

「誘拐か?」

青年が言っても暫く何も言わなかった男達だったが、れんげの腕を未だ掴んでいた男が、やっちまえ、と叫んだのを合図に男達が一斉に二人の青年に襲いかかった。

「殺すな、水月」

青年が、背中の大刀を手に持った青年に向けて言う。

「はぁ…たまには殺してもいいだろ、サスケ」

それには答えず、青年、サスケは自らの刀を鞘におさめたまま腰から抜いた。

「ちっ、ナメられたもんだ…殺っちまえ!」

れんげは今戦っている二人の青年の片方、サスケに見覚えがあった。

(でも、どうしてこんなところに…?)

ちくしょう、と言う声と同時にれんげが今までれんげの腕を掴んでいた壮年の男が、れんげの首を腕にかけ、首元に小刀を沿わせた。

「動くな!動いたらこのお嬢さんの首はなくなるぜ!」

れんげに近付いてきていた青年達の動きが止まる。

彼等に襲っていった男達はあっけなく叩きのめされて、地面にのびていた。

じり、とサスケが動く。

「動くんじゃねぇ!」

次の瞬間、サスケが駆け出し、れんげを捕まえている男の小刀を弾き、鞘入りの刀でみぞおちを一発叩き込んで男はうめきながら倒れた。

支えを失ったれんげが倒れかけるが、サスケがそれを支えた。

「大丈夫ですか、姫」

その言葉にれんげは目を見開いた。

「あなたはやはり…うちはサスケですね?」

「………」

サスケはうつむくしかできなかった。









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