02
ざわざわと賑わう、繁華街。
空は気持ちのいいくらいの快晴で、久しぶりに日の目をみたあたしには眩しすぎで少しふらふらしていた。
これだけの人の中を歩くのも一苦労だ。なんせ、人と人との間にほとんど隙間が無い。
「サスケー、腹減ったから店に入ろーよ…」
水月がだるそうに言う。
それも当たり前のことで、太陽は真上、今はお昼時なのだ。
しかしこの時間帯にこの繁華街で席の開いている店はほとんどない。さっきからそのおかげでご飯にありつけずにいる。
それでこの街を抜けて別の街でご飯にしようと言っていたのだが。
「河童が、もうちょっとくらい我慢できないのかよ」
あたしが独り言を言うと、驚くべきことに、サスケと水月が先に並んで次に香燐と重吾が並び、最後にあたしが前の彼らと離れない程度に歩いていたというのに、水月に聞こえていた。
「――んだって?れんげ」
水月は立ち止まってあたしに睨みを効かせてきた。隣ではサスケが立ち止まっている。香燐がすかさずサスケの隣についた。
「聞こえてたの…。やるね、河童のくせに」
ぐっとこぶしを握って殴りかかってこようとする水月にサスケは止めに入る。
「おい、よせ、水月」
「――チィ」
「れんげもいい加減にしろ」
サスケの隣で香燐がかすかに舌打ちをする。重吾はあたしたちの間でおろおろしていた。
「はいはい」
だんだんと人々があたしたちを気にし始めたのであたしは逃げ込むように一軒の店に入った。正直、あたしもお腹がすきはじめたのだ。
あたしが入ったあと、重吾に続きみんなが入ってきた。
その店はちょうどご飯屋で、席も5人分きっかり空いていた。
あたしは素早くその席に座るとメニューをとった。
「なんだ…れんげも腹へってるんじゃないか」
水月はあたしの向かい側の壁の方に座り、重吾はあたしの左隣、左斜向かいにはサスケ、その隣に香燐が座った。
あたしは水月を無視し、メニューを真ん中に置いた。
「あたしはもう決めたから」
みんなも早く決めて、とあたしが言うと、お水が運ばれてきた。
「ご注文は」
あたしがまず言い、なんとも決めるのが早いものだ、みんなもそれぞれ注文した。
持ってこられた水を飲む。冷たいそれは喉に冷たく心地よい。幾分か気分が和らいで水が半分ぐらい残ったコップをテーブルの端に置いた。
右の隣の席の客が立ち去り、店員が後片付けをするとすぐに次の客がやって来た。
見るからにガラの悪い人たちで、あたしはさっきの落ち着きも忘れてまたなぜかイライラし始めてしまった。
ちょうどガラの悪い男があたしの横を通り過ぎようとしたときだ。
「――うわっ!!?」
端っこに置いていたコップがひっかかって水が男に思いっきりかかった。
「――何さらしとんじゃこのアマ!!」
がしゃんとコップが地面に落ちて粉々になった。
「はぁ?自分で引っ掛けたんでしょ?」
てめぇこの人を誰だと思ってやがる、と水をかぶった男と違う奴が割り込んできた。一緒に店に入ってきた男だ。こいつもガラの悪い格好をしている。
「この方はなァ、さる里の特別上忍で『彼に勝るものなし』と里中から畏れられた方だぞ!」
「世界が狭い…どうみたって下忍以外に考えられない」
あたしが独り言をぽつりとこぼすとサスケが見兼ねたらしい。
「れんげ、放っておいてやれ」
「何だと!?俺様を侮辱したな!!?」
どうにも今日は虫の居所が悪い。どう我慢したってこいつを一発殴らないと気が済まない、と体中が叫んでいる。
「てめぇこの服弁償するだろうなぁ?!」
「そんなお金ありません。すいませんでした」
これでいいでしょ、と里の最強とか言った男をみると、謝ってすむもんじゃねぇんだよ、と叫んだ。
その叫び声で店の人がこっちを注目し、あたしはため息をついた。
「サスケ、こいつ一発殴っていい?」
「待て、問題はなるべくおこすな。金はいくらほしいんだ」
サスケが男に問うと、1千両だ、と男はどなり返した。
「…れんげ、外に行ってこい。一発だけだぞ、急所は外せ」
「行ってやろうじゃねぇか、お嬢ちゃん。泣いても知らねぇぞ」
最強らしい男はそう言い、周りにいた似たようなガラの悪い4、5人の男たちがげらげら笑った。
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