05.2
「どうしてあの時止めたの」
重吾にベッドに連れられ、周りにみんなが座り、あたしは左にいる水月に訊いた。
「…ボクも事情を知ってるからね」
あたしは水月を睨みつけた。
「でもボクなんかが知ってるとなると、サスケのほうが知ってると思うけど」
そうなの、とあたしは目で問うた。
「――あぁ、知ってる」
サスケが答えたあとゆっくりと香燐が口を開いた。
「ウチも聞いたことがある。大蛇丸が唯一解明できないチャクラを持った人間だって」
香燐は慎重に話しているようだった。
たしかに、あたしは何度も大蛇丸に色々されては何も分からないと彼が嘆いていた。――そのお陰であたしは――…。
「あたしの一族に何があったの」
嫌なことを思い出さないようにあたしは少しだけ頭を振り、サスケを見て強めに言った。
ちらりとサスケはこちらを見、今はだめだ、と言い放った。
あたしはそれが頭にきて、殴りかけようとすると体はいうことを聞かず、ただ前のめりに倒れてしまっただけだった。頭がぐらぐらと揺れている。
「…その体だ、今は休め」
しかしやっと一族の状況を聞ける機会をあたしはみすみす逃したくはなかった。
「いや。一族はどうなったの」
サスケは溜め息をついた。
お前が大蛇丸についてきた後、とサスケは静かに言った。
一族は里の者達に非難されたそうだ。
それから続けようとしないサスケにあたしはしびれを切らして、なんで、と訊かなければならなかった。
「……れんげが自ら大蛇丸を誘ったと思った、と」
だからあたしの一族は里の笑い者にされた――?
はっ、とあたしは笑った。
「何よそれ、馬鹿みたい。誰が大蛇丸を――」
あたしは笑いながら呟いた。
「それでどうしたの、一族のみんなは」
前々から蒼黒一族は、里の上層部としては煙たがられていたそうだな。サスケは何の感情も込めずに真っ直ぐあたしの目を見て言った。
「…」
あたしは何も言えなかった。
しかしサスケは気にせず話を進めていく。
「そこにれんげが大蛇丸に連れていかれる。上としては海老で鯛を釣ったようなもんだ」
そしてあっという間に一族を里から排除したわけだ。
ぴよぴよ、と鳥の鳴き声が聞こえて下を向いてみると、シーツを握り締めたあたしの手の横にちょこんとこっちを見上げている緑の鳥が居た。
そっと手を近付けるとそれは慌てて飛び立ち、重吾の肩にとまった。
「それから一族は里にいられなくなり、抜けた」
これが大蛇丸から聞いた話のすべてだ、サスケはそこでやっとあたしから目をそらした。だがあたしは重吾の肩に乗っている鳥を見つめていた。
ほとんど諦めた気持ちであたしは訊いた。答えは分かっていたはずなのになぜか訊いていた。
「それから皆がどうなったのか知らないの」
誰も何も言わなかった。
あたしはいきなり起き上がった。ぐらりとかすかに頭がゆれたが今はそんなことを気にしている場合じゃない。
「どこにいくんだよ!?」
焦ったような声を出してあたしの前に立ちはだかる水月。あたしはその顔を思いっきり睨みつけた。
「やっぱりさっきのやつしぼり上げてみんなの居場所を吐かせてやる。それから一族を里の外に追いやった主犯も」
「やめておけ!れんげ、今のその体じゃ何にもできないぞ!」
香燐だ。彼女も、珍しいことに、水月の隣に立っている。
「それに…」
あたしは重吾を振り返った。
「何…まだ何かある!?」
重吾は手に鳥を乗せる。
「何なのよ!!」
あたしは重吾に向かって思いっきり叫んでいた。自分の声で耳がぐわんぐわんしている。
「一族のごく少数以外、里と同じ情報を流されているそうだよ」
あたしの頭は真っ白になった。
「……どういうこと……?」
やっと出た声はかすれていて、あたしはやっと喉がカラカラなのに気づいた。
しかし誰も何も言わない。あたしはまた叫んだ。
「一族のみんなにも…あたしが自ら大蛇丸に行ったって言ってるの!?」
そのほうが都合が良いからだろう、とサスケは言った。里よりもれんげ一人を恨むほうがほかの里ともうまくいく。
あたしはサスケを見た。
「先にあんたを殺るわ」
サスケがいつのまにか写輪眼になっているのも気にせず印を素早く組む。写輪眼で見切っても、対応できる技など存在しないのだ。
「今日はもう寝ろ」
サスケは言った。
すると突然眠気が襲ってきて、あたしは彼の眼を見たことを後悔し、むかついたが眠気には勝てず、あたしは倒れこんだ。
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