季節SS
A
『母の日の心得』によると…どうやらカーネーションを渡すらしい。
駅前の花屋さんに寄って店員さんに勧められるまま、ちょっと大きめの鉢植えを買った。
それを抱えてバス通りをテクテクと歩き続けて…ずっと前から気になってたケーキ屋さんの前にさしかかる。
覗き込んだ店内にはカーネーションのカタチをかたどったキレイな細工がしてある美味しそうなチョコケーキが!
大好物につられて…ついつい買っちゃった。
そんなこんなで。
大葉家にたどり着いた頃には持ち切れない程の大荷物になってた。
「お…お前…どした?」
玄関を開けるなり呆然としたような大葉の声。
「ん…なんか久し振りに歩き回ってたらこんな事になっちゃって…。」
話を聞きながら大葉が俺の手から荷物を一つずつ取ってくれて…一番最後のカーネーションが玄関に置かれ、楽になった俺の両手を引っ張った大葉に抱き寄せられる。
「お…大葉?」
誰かに見られちゃマズいと思って焦って腕から抜けだそうとするのに!
大葉は…腕にグッと力を込めてなかなか離してくれない。
「…バカだな。」
「だって…」
「俺…芹沢のそういう所凄く好きだよ。」
耳元でそう言われて顔がカァーッと熱くなった。
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