季節SS
A

「…え、弘樹…これ…?」

熱いチューを途中で遮られ不満タレタレな俺の腕を取った弘樹に連れて来られたのは…寮の入口横にある駐輪場。

「…で?これで俺にどうしろと?」

「別にこれで一発芸しろとか言ってる訳じゃないよ…こいで。」

「…どこまで?」

「海岸。」

固まる俺を笑顔で見上げる弘樹。
だってさ…弘樹の言う海岸はここから坂を下ってひたすら走った先にあるんだぞ?
距離で言えば…おそらく十kmはあるだろう。

そんな思いでしばらく弘樹を見つめていたものの…俺の恋人は見れば見るほど可愛くて。

「…よっし!どこへだって連れてっちゃうぜ!」

「そうこなくっちゃ!さすがは僕のゆうだ!」

颯爽とチャリに跨がり振り返るとその後ろに座り楽しげに笑う弘樹と目が合う。

「ホラ!早く出せ!」

そんな俺の頬をグリグリと指先で弄りながら弘樹が頬を赤くした。
今日のひろはムチャクチャ可愛い!
…って思ったら、そりゃ反応もするよな?

「ちょっ…なに!」

「ひろがあまりにも可愛いからだぞ?」

元気になった股間を触らせ慌ててる弘樹の額にキスをして…。

「帰ってきたら濃いいのシようね?」

「…バカ!」

益々赤くなる頬を見つめてチャリをスタート!
最初は慣らし程度に緩くこいで、帰りが辛いなだらかな坂道をどんどん加速する。

「う…わっ!」

「おー!イイ風っ!」

ジェットコースターが苦手な弘樹の細い腕が俺の腹にキツく食い込む。
ちょっと…イヤ、かなり苦しいけどこんな嬉しい事は滅多にねーから我慢、我慢!

坂を下りきり踏切を渡って駅前を左に走る。
ここからのストレートがなかなかキツい。
だが…俺も男だ!
どこまでだって行ってやろーじゃねーかっ!

「ゆう!見て見て!」

後ろに座ってる弘樹の指が右前方を指す。
海へと続く河の水面にキラキラと反射する光がスンゲーキレイで。

「キレイだね!」

やんわりと笑う弘樹の方がもっとキレイだ。

口にはしないけど…
心からそう思った。


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