季節SS
A
くどー達の『愛の巣』に着いて入口でチャイムを鳴らした。
…けど。
何度鳴らしてもくどーもニイサンも出てくれなくて。
「…留守なのかな?」
「ああ…そうかもしれないな。」
諦めた俺達はマンションを出て専用庭まで歩いて駐車スペースを覗く。
「あーやっぱり!車がないよ?」
「出掛けているんだな?さすがGWだ。」
いつもニイサンの車がとめられてる場所はガランとしてて…ガックリする俺の頭に掌を置いた大葉がニコッて笑って。
「せっかくここまで来たんだから、少し散策しないか?」
そんで…俺の手をやんわり握ってくれる。
「うん!するするっ!」
散策ってなんだろ?
…って思いながら、手を引いてくれてる大葉の横顔を見上げる。
「大葉…?」
「…なんだ?」
向けられた瞳にドキッとして…なんだか急に照れくさくなって繋いでた手を離した。
でもすぐにまた繋ぎ直されて。
「嫌、なのか?」
首を傾げる大葉にまた胸がキュンってする。
「イヤとかじゃなくて…」
「なら、手を離す理由はないだろ?」
優しく笑って歩き出す背中を見ながら、こんな真っ直ぐな大葉が大好き…って。
出会えて良かったなぁ…って思う。
「ね、大葉?」
繋いだ手をギュウッっと握って寄り添って。
「大好きだよ!」
いつもと同じセリフしか言えないけど…それが一番の俺の気持ちだから。
「俺もだよ、太一。」
優しく笑った俺の恋人が唇にキスをしてくれた。
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