K I R I B A N
D
「楓…俺、お前の事すげぇ好き。」
キスの合間に佐古がそう呟いて額に唇を寄せる。
「佐古…あのね?」
「…ん?」
僕を見下ろし体を屈めて首筋にキスしてくる。
「ン…僕、自分の…名前イヤ…なんだ。」
耳たぶに舌が這わされ、身体が震える。
「そうなんだ?」
「でも…ッ…佐古に呼ば…れてから、ちょ…っとずつ…好きになって…。」
耳元にとどまっていた唇が僕の真っ正面に戻ってきて。
「俺は楓って好きだぜ?キレイじゃん?」
「そうじゃなくても女顔なのに…名前までそんななんて。」
僕の小さい頃からのコンプレックス。
秋に産まれた僕に付けられたカエデって名前。
嫌い、じゃないけど…好きじゃない。
…でもね。
「でも…佐古に呼ばれるのは…好き。」
「そっか。」
再び抱き締められて。
「じゃあ…お前が自分の名前好きになるように俺がいつも呼んでやる。」
な、カエデ…?
頭上から降りてくる暖かい声に目を閉じる。
佐古ってば…いつも僕を放ったらかしにしてるクセに。
なのにこうやって、また僕を魅きつけるんだ。
「佐古…?」
「…ん?」
「いっぱい…呼んでね?」
やんわりと笑った佐古が僕の唇にキスをした。
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