K I R I B A N
D
「楓…俺、お前の事すげぇ好き。」

キスの合間に佐古がそう呟いて額に唇を寄せる。

「佐古…あのね?」

「…ん?」

僕を見下ろし体を屈めて首筋にキスしてくる。

「ン…僕、自分の…名前イヤ…なんだ。」

耳たぶに舌が這わされ、身体が震える。

「そうなんだ?」

「でも…ッ…佐古に呼ば…れてから、ちょ…っとずつ…好きになって…。」

耳元にとどまっていた唇が僕の真っ正面に戻ってきて。

「俺は楓って好きだぜ?キレイじゃん?」

「そうじゃなくても女顔なのに…名前までそんななんて。」

僕の小さい頃からのコンプレックス。
秋に産まれた僕に付けられたカエデって名前。
嫌い、じゃないけど…好きじゃない。

…でもね。

「でも…佐古に呼ばれるのは…好き。」

「そっか。」

再び抱き締められて。

「じゃあ…お前が自分の名前好きになるように俺がいつも呼んでやる。」

な、カエデ…?

頭上から降りてくる暖かい声に目を閉じる。

佐古ってば…いつも僕を放ったらかしにしてるクセに。
なのにこうやって、また僕を魅きつけるんだ。

「佐古…?」

「…ん?」

「いっぱい…呼んでね?」

やんわりと笑った佐古が僕の唇にキスをした。


[*←前n][次n→#]

6/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!