K I R I B A N
C
重なった唇を離すと…
目の前の佐古が、怒ったような顔してる。
イヤ、だったのかな?
不安になって思わず視線を外した。
「…お前さ…?」
不機嫌そうな声に顔を上げると…眉を寄せた佐古が溜め息を吐いて。
「ごめ…」
「普通は俺からキスする所じゃねぇの?」
…ん?
なんか…ちょっとポイントがズレてるような?
「なんでお前がキスしてくんだよ!」
二の句が継げない。
この場合…僕は一体どうすればいいんだろうか?
戸惑う僕に気付いたのか伸ばされた佐古の腕が僕の手を取り…胸の中に引き込まれる。
「佐古…?」
頬を寄せた佐古の胸からは規則正しくも速い鼓動が聞こえてきて…アゴに掛けられた細い指で、顔を上向かせられた。
「あの…?」
「楓。」
見上げた唇から僕の名を呼ぶ優しい声が零れる。
「…楓…?」
「は…い。」
まるで…エッチしてる時みたく熱っぽく呼ばれて胸がドキドキした。
近付いてくるキレイな顔にそっと瞳を閉じると、柔らかくて暖かい佐古の唇が…僕の唇に重なって。
確かめるように軽く優しく小さなキスを落としてく。
「…ん…。」
熱くなる身体を強く抱き締められ…僕は、佐古の背中に回した腕に力を込めた。
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