K I R I B A N





ガラと開け放たれた窓から寒風が吹き込む。
その度に俺は。

「大丈夫ですか?」

隣にいる、恋人の母親である和美さんにそう声をかける。

「もう、大丈夫よぉ!智ちゃんたら心配症なんだから!」

すると彼女はキレイな顔で少女みたいにクスクスと可憐に笑い、俺は苦笑いをしながら小さく溜め息をはいた。

だって…どう考えたって心配になるに決まってる。
冷たい風が容赦なく吹き込む部屋に出産間近の妊婦さんがいるんだから。
てか…心配しない人なんていないと思うんだけど。

そんな事を思ってる俺に気付いてか和美さんはニコリと笑ってみせてから。

「大丈夫だってば!こう見えても私は子供三人も生んでるベテランなんですからね。そんなに心配なら拓ちゃんにベビーベッドを早く組み立てろって言ってちょうだい。」

と、これまた難題を俺に突き付けて一層楽しそうに笑った。

「…ルセェな。」

低い苦い声をあげる当の本人は今、足元の畳に座ってそのベビーベッドの組み立て…というか。

「出来ねぇんだったら最初からやんな!どうやったらネジが中で折れんだよ!」

怒りながら工具を駆使して和美さんが組み立て(?)をしたベビーベッドらしき物の解体をしている。

「だってぇ…私は普通にネジ巻いただけ…」
「だから!曲がってんのに強引にネジ止めして、歪んだヤツを力付くで合わせようとしたからだって何度言やぁ分かんだよ!!」

俺といる時は穏やかな拓真が…今は久々に鬼の形相で怒っている。
オタオタとする俺の隣で和美さんは不満そうに頬を膨らましながら。

「だから作る前に電話したじゃない。」

…と、言うんだけど。

「時間が悪ぃんだよ!セックスしてる最中に電話なんぞ出るかよ!」
「たた、たくっ!」

もう…なんでそういう事を大声で言うかな。

熱い顔を拓真の胸に押し付けながら宥める。
すると怒りが鎮まりつつあるのか拓真は俺を抱き締めて髪を撫でてくれてから…。

「解体はしてやるから作り直しは柳さんとやれ!分かったな!」

と、また怒鳴った。

「ハイハイ。もう…昔はあんなに可愛かったのにこんな乱暴者になっちゃって。」
「なんだと!?」

…ってもう。
仲がいいんだか分からない二人のやり取りの間に入り俺は深い溜め息をついた。





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