K I R I B A N

‐智SIDE










楽しみにしていた久々のデートはほんの数時間で終わりを告げた。


『人前に出るんだから手を繋ぐのとかましてやキスなんてダメだからね!』


洗濯中の俺よりも先に家を出る拓真と玄関先で交わした“約束”。
すでに行きの駅前でと電車の中で破られたけど…その後は約束通り、軽く手を握る程度におさえてくれてたっていうのがかなり凄い。
…なのに。


いつもならあんなに俺に触りたがるのに…なんで触らないの?


なんて意味の分からない…まるで欲求不満みたいなボヤきが出てしまう。
でも実はその通り、だったりする。

年がら年中拓真に触られている身体は学校にいる時以外でこんなに長く触れられないなんて滅多にない。
だからなんていうか…ほんの少しのスキンシップにも敏感に反応してしまう自分がいて。

「…はぁ。」
「どうした?」

溜め息と共に拓真の声がかかり、ソンナコトを悶々と考えてた自分に驚き瞬時に顔が熱くなる。

「…公共の施設ではエロいコト考えちゃイケナイんだぜ?」

すぐ側に寄せられた拓真の唇が俺の耳元で低く囁く。
それだけで…変な期待をしてるのか身体の芯からゾクゾクと沸き上がってくるヨコシマな想いに俺は苦笑いをした。







◇◆◇◆◇







都心まで出ていた俺達が地元の路線に戻るまで三十分。
そしてそこから更に一時間が過ぎやっと俺達のマンションのある駅にたどり着いた。

その間中俺は拓真の動きをずっと目の端で追いながらドキドキと高鳴る胸をおさえていて。
拓真はといえばそんなこっちの気持ちを知ってか知らずか時折俺の指に自分の指を絡ませたり…首筋にフッと息をかけてきたりと色々で。

おかげさまで…俺は今、とてつもなくイヤラシイ事をされたくて仕方がないレベルにまで達していた。

「ともチャン…」

隣を歩く拓真の手が俺のをギュッと握る。

「…なに?」
「下向け。」

そう言われた意味が分からず拓真を見上げた。

「そんなエロい顔、周りに見せんな。」
「…は?」

小首を傾げた俺を歩道のど真ん中で抱き締めた拓真が低い声を絞り出すみたいにして。

「お前今、すげぇ欲しそうな顔してんだよ。」

そう言って俺の顔を自分の胸に押し付けた。
ストレートに図星を突かれた俺の心臓は大きく高鳴り二の句がつげなくなる。

「電車ン中で散々あおった俺も悪かったんだがな。」

頬を寄せた拓真の胸がドキドキと音をたてる。
その熱い鼓動を聞きながら俺はゴクリと喉をならした。





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