K I R I B A N




さわさわとそよぐ風が窓の隙間から入ってきて…読みふけっていた文庫本から顔を上げる。

「いい風だな…このくらいの時期が一番過ごしやすくていい…」

少し広めのベッドに横になっている俺の隣に寄り添う恋人の方を向く…と。
当の芹は俺の腕に寄り掛かった姿勢で静かな寝息をたてていた。

…おかしい。

つい今しがたまで横で楽しげに“くどー”の話をしていたのに。
そう思いつつもその“今しがた”がどのくらい前だったのか…それを俺は覚えていなかった。

「もしかして…かなり長い間放っておいたか?」

スヤスヤと眠るあどけない顔立ちに声をかけるが芹はピクリともしない。

溜め息をひとつ吐き開いていた文庫本を閉じてベッド横のテーブルに放ると、芹を起こさないように体をずらし…ベッドからおりた。

そして体勢を立て直してから掛け布団をめくり…抱き上げた芹をその中に入れてから布団をそっと掛け戻して。

「芹…」

少し伸び始めた前髪をあげて…最近気に入っている額に唇を寄せた。



パカッ。



すると突然芹のまぶたが開き目を真ん丸く見開いた恋人が…瞬きを何度か繰り返して顔を真っ赤に染めて…。

「おぉば…!」

慌てたように布団の中に潜り込んだ。
何事かと思い布団を引き上げようとするのを中から力一杯抵抗されて。

「芹、どうした…」
「どうもしないよ、平気平気!」

なんだか…こう…すっきりしないというか。

「芹。」

短くそう呼び…返事をしない芹に焦れて掴んだ布団を力ずくで引きはがした。

「一体…」
「ダメ、見ないで!」

ベッドの上で丸まり慌てる芹の赤い顔を見て…俺は。

「どうした、どこか痛いのか!」
「違うってば!だからや…っ…!」

掴んだ腕をグッと引くと更に顔を真っ赤に染めた芹が必死に自分の股間を押さえていて…。

「…芹…?」

諦めたのか抵抗の力を緩めた手を外させると…触れ慣れた芹の、可愛らしいソコが何故か反応を示していた。

「これは…」
「俺っ、なんか夢見てたみたいで…っ…」

そう言って顔を真っ赤にした芹があまりにも可愛くて。
俺の中の…何かのスイッチがカチリ、と音を立てた。





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