K I R I B A N
4
「ホレ、腕出せ。」
寮にたどり着き俺達の愛の巣に入るとすぐに楓の細い腕を引く。
「イタタ…平気、ホント大丈夫だから。」
「『イタタ』ってセリフは痛い時に言うんだぞ、ってホレ。」
見え見えなごまかしをする楓を軽くにらむと、本人は諦めたように肩を落としてコートとブレザーを脱ぎワイシャツの右の袖をあげた。
細い腕にはこれといった変化はまだ見られないが…俺が反射的にした事だからもちろん手加減はしてない。
故に…。
「イタッ!!」
右の肘の辺りをクッと掴むと楓は顔をしかめて声を上げた。
「…冷やしとくか。」
腕を外してクローゼットを開くと足元の引き出しからタオルを出して水道水で軽く濯ぐ。
トン…。
その背中に…小さな振動と温かな感触がして。
「ごめんね…。」
小さな楓の小さな声が聞こえた。
「…なにが。」
振り返らずそのままタオルを濯いでると背後から楓の腕が回され…ギュッと抱き締められて。
「帰り…佐古をほったらかしにしちゃって…」
背中に楓が顔を埋めた。
…近いような、そうでないような。
俺のツボを微妙に外した答えに一人苦笑いをする。
…こんな楓にだからこそ俺はキチンと言わなきゃならんのかな。
そう思い絞ったタオルを楓の腕に当てて振り返って。
「いや…っていうかそもそもツカサと一緒に下校する意味はあんのか?」
「えっ??」
可愛い楓のビックリ顔を見つめて…なんていうか俺は自分の小ささをヒシヒシと実感したりする。
「や、悪い。俺…変な事言ってるよな。」
そう言ってキレイな黒い瞳を見つめながら楓の唇に自分のを重ねた。
「さこ…」
「俺、お前がツカサと楽しそうにしてるの見てて嫉妬してたんだよ。」
溜め息とともに吐きだし楓の肘をアイシングしながら抱き締めて。
「けどさ…」
「嬉しいよ佐古…。」
言いかけた俺の体に回された左手にキツく抱き締められる。
「ヤキモチ…焼いてくれたんでしょ?」
腕の中の楓の耳がポッと赤くなり上げた顔もやはり真っ赤で。
「…嬉しい。」
ほんわりと蕩ける楓の笑顔があまりにも可愛くて…俺はたまらずキツく抱き締め柔らかな唇に何度もキスをした。
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