K I R I B A N




何度目かのデカい溜め息を吐き見上げた空にはいつの間にか丸い月が顔を出していた。

「…どんだけ。」

一人ぼやいて頭をかきジャングルジムの頂上から飛び降りる。
その着地の衝撃でジンジンと痺れる足に苦笑いをしながら俺は寮への道のりをゆっくりと歩きだした。







◇◆◇◆◇







暗くなった道を歩き駅前の商店街を抜けると大通りに出る。
信号待ちの最中にふと見上げると…駅の真後ろにある山の頂上がほんのりと明るくなっていて。

「…寮のか。」

その明かりが俺達の暮らす寮のだと思うとパブロフさながら、脳裏に楓の柔らかな笑みが浮かんだ。


…相当重症だ。


そう思って溜め息を吐き歩行者用の信号が青に変わると同時に駅に向かう人の波に流され歩いていく。



ガシッ!



その途中いきなり腕を掴まれ反射的にその腕を捩り上げた。

「イタタッ!」

可愛らしい声と上げた腕の長さでその相手が誰だかすぐに分かる。

「楓っ!」
「イタタ、佐古っ!」

真っ赤な顔して唸る楓の腕を解放し慌てて駅前のコンビニ前に移動して。

「お前、何してるんだこんなところで!」

チラと時計を見れば…さっき分かれてからすでに二時間が経過しようとしてるところで。
呆れ顔の俺を涙目で見上げながら楓は腕をさすり唇を軽く尖らせた。

「…佐古を待ってたんだよ。」

そう言ってまた不満げに唇を尖らせる楓を見つめながら…俺は。

「そうか…待っててくれたのか。」

胸の奥がジンとするのを感じとてつもない大きな幸せにスッポリと包まれて…目の前のその華奢な身体をギュッと抱き締めた。





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あきゅろす。
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