K I R I B A N




学校を出てからずっと、俺の恋人は俺を間に挟んだ向こう側を歩くツカサと話をしていた。

その内容はと言えば…ヤレ部員の誰それがどうだとか昨日の野球はどうだとか。
それでも楓は奴なりに気を使ってか『そうだよね、佐古?』なんて俺に話題を振ってきたりするが。

「いや、俺野球よく分かんねぇから。」

そう答えざるおえないようなキラーパスだったりするから尚困る。

…っつーか。

「なんで三人での下校なんだよ。」

胸に渦巻く蓄積されてた一番の疑問と不満が…無意識に口から零れてしまい足を止めて右掌で口を覆う。
何の前触れもなくのセリフに俺の両隣の二人もただキョトンとしてるだけで。

俺は…。

「あー…悪ぃ。俺、忘れ物したから学校に戻るわ。先に行っててくれ。」

そう言って踵を返すと奴らを振り返りもせず早足で来た道を戻り始めた。







◇◆◇◆◇







スタスタスタスタ…


ただひたすら真っ直ぐに歩きながらも視線はずっと足元に向けたまま。

…一体…
俺は何やってんだ。

ピタリと足を止めて顔を上げるとすぐ隣は公園の入り口。
迷わずそこに入ると偉そうに鎮座しているジャングルジムに手をかけ一気に頂上に上ってポールに腰を下ろした。


…大人げないのは分かっている。


楓ともう何度も話をして理解も納得もしている。
…けど。

「感情がついていかねぇ。」

正直、今まで誰にだってこんな気持ちになった事はない。

付き合ってるオンナが俺以外の奴と話ししてても気にならなかったし、たとえ俺の目の前でキスしてようがヤッていようが眉ひとつ動く事のない自信もあった。

なのに…
今の俺はなんでこんなに余裕がないんだ?
そんな自分に自分が一番驚いていたりする。

「…そんだけ本気って事なのか。」

無意識に出た自分の声に乾いた笑いが出る…が、それは紛れもない真実で。
自嘲気味に笑いデカい溜め息を吐き出し俺は一人、頭を抱えた。





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あきゅろす。
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