K I R I B A N




夕暮れも迫る頃、室内には…ただただ重い空気だけが流れていた。

「一体何をしていたんだ。」

いつもでは聞けないような…“穏やか”“温厚”という言葉が良く似合う男の低い声が室内に響き渡る。

「それは…ですね…」

その問いに答えている奴の煮え切らない態度に苛立ったのか我らが委員長、大葉弟は露骨に顔をしかめて臨戦態勢に入る。
それを掌をかざして宥めながら俺は頭を抱えた。



野球部に所属した楓の上がり待ち程度に始めたクラス委員。
それがこんなにキツく煩わしいだなんて夢にも思ってなかった俺は…腕時計をチラと見て、教卓の前の鬼の形相な大葉弟を見てデカい溜め息を吐いた。

「…もういい。二組はしばらく会に参加しないで結構だ。少し反省しろ。解散。」

静かにキレた男はそう言い放って会議室を出て行き俺と小松、芹公とでその後を追い掛ける。

全く…。

野球部の練習なんてもうとっくに終わってるっての!
待ってるはずが待たしてどうするんだ!

そう心でぼやきながら俺は大葉弟の腕を掴んだ。







◇◆◇◆◇







キレた奴をその恋人に任せ、鞄を引っつかんで教室を後にした。

階段を駆け下りバタバタと玄関口に向かって走ってると…その目の前に俺の可愛い恋人が現れて。

「佐古、お疲れさま!」

そう言ってやんわりと笑った。
可愛らしい笑顔を見つめながら走る速度を落とす…と?

「佐古さん!お疲れさまッス!」

俺の恋人の隣に…俺の恋人の仲良しクンが現れた。

「…おう。」

グッとテンションを下げた俺を気にもせずツカサは笑顔で楓と話を始める。
その姿を見ながら俺は無意識に拳を握り締めていた。





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