K I R I B A N
3
はあはあと息を切らしながらの全力疾走。
だって…そうでもしないと佐古に追い付かれちゃうから。
さっき、ついつい訳の分からないテンションに任せて僕は恋人に『バカ』を連呼してしまった。
頭脳明晰という優秀な彼に向かって。
しかもそれも…車に轢かれそうになった所を助けてもらったにもかかわらず、というオマケ付き。
「僕の方こそバカバカだよ!」
ひたすら走っていた足が校門を抜けて下駄箱に滑り込む。
ここまでくれば…もう平気だろうとホッとしてると。
「オハヨ、西野!」
突然声をかけられあまりの驚きに僕はその場で跳び上がった。
「かか…春日部!」
「めっちゃオーバーリアクションでしょ。」
焦る僕を気にもせず春日部はいつもと変わらず楽しそうに笑う。
「俺もいるんだけど?」
その隣には春日部の恋人の柊がいて…って!?
チラと見た先には下駄箱に向かって走ってくる佐古の姿があって。
「柊!楓を捕まえろ!」
僕を見るなりそう叫んできた。
慌てふためいた僕は足をもつれさせながらも必死に逃げようとする…けど!
グイッ!
柊のおっきな手で首根っこをまるで子猫のように掴まれ…身動きが取れない。
「はなっ…離して!」
バタバタと暴れる首元が楽になると同時にそのまま反転させられた僕の目の前には…。
「さ…こ。」
僕の大事な恋人がおっかない顔をして立っていた。
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