K I R I B A N
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‐智SIDE
今日は…物凄く久々な拓真とのデート。
そう思ってたせいか俺は自分でも笑っちゃうくらい落ち着きも集中力もなくバイト先でも凡ミスの連発だった。
『変態エロ男との熱い夜でも想像してたのかぁ?ともちゃんたらやーらしぃ!』
…なんて、割と的を得てるような奏多さんの冷やかしに俺は時間中ずっと頬を赤くしていた。
そして仕事が終わりタイムカードを押すと俺は逃げるみたいにしてジーマニを飛び出し、今はこうして待ち合わせ先の『まめろう』の前にいる。
ここは駅から少し離れた場所にある小さな喫茶店で、拓真が高校生の時からずっと通っているというお墨付き。
その話を初めて聞いた時から一度来てみたいと思ってたんだ。
そしてやっと今日、拓真の口からこの場所の名前が出た。
嬉しくて…天にも昇る、とはまさにこの事!
ここの美味しいであろうコーヒーが飲めるのはもちろん嬉しいけど…何より拓真のテリトリーに入れる事が嬉しくてしかたなかった。
「あ…。」
熱くほてる頬に冷たい滴が落ち…すっかり暗くなった空を見上げる。
「雨…?」
寒空に小さく息を吐きだすとジーンズのポケットから携帯を引き抜きフラップを開いて…電池切れで真っ暗な画面を見下ろして俺は深い溜め息を吐いた。
◇◆◇◆◇
「…とも!」
どのくらいの時間が経ったのか…ボンヤリしてた所に名前を呼ばれ驚いて顔を上げる。
…すると。
「……え?」
こっちに向かって駆けてきた拓真が…真っ正面に来るなりいきなり俺を抱き締めて。
「チクショ…探したぜ。」
そう言って俺の唇にキスをしてきた。
「んーっ!?」
暴れる俺を更にキツく抱き拓真のキスは深く深くなっていく。
せっかく来れた『まめろう』の前でこんな派手なキスシーンしたら恥ずかしくてもう二度と来れないじゃないか!
そう思いながらも俺は…伸ばした両腕を拓真の首に回してもっと甘く深いキスをねだった。
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