K I R I B A N




頂上にたどり着いた俺達はそのまま通いなれた寮の中へと足を進める。

前もって事情をメールしといた剣右さんから『旧・愛の巣』の俺の部屋の鍵を受け取り…久々に足を踏み入れた。

開け放ったドアの先にはデカい窓があり、その外には風にそよぐ樹の葉。
ホンの少し開けた窓の隙間からは爽やかな風が流れ込んできた。

『気持ちいいね。』

上げた声が弘樹の可愛い声にかぶり俺達は…また声を重ねて笑いあった。

「茶でも飲む?」

来がけにコンビニで買ってきたペットボトルを取り出し少し温くなったそれを手渡すと、弘樹は顔をほころばせて"ありがとう"と小さく呟く。
見慣れたその仕草さえも…今日の俺には眩しく見えてしまう。

「ひろ…」

「…ん?」

口元に運んでいたペットボトルを奪い部屋の真ん中に置いてるガラスのテーブルの上に置く。

すると…弘樹は俺の考えが分かったらしく頬を赤くしてわざとそっぽを向いて。

「まだ…飲んでる途中…」

なんてむくれた口振りをする。


…可愛い。


忙しい中で忘れがちだけどこんな風にマジマジと弘樹の動向を見るのはめちゃくちゃ久し振りで…改めてその可愛さに胸がときめいちまって。

「ひろ…キスしていい?」

いつもならお構いなしにすんのに…なぜかそんな間抜けな事を聞いてしまった。

「だぁめ!」

なのに…これだよ。

いきなりのNOに驚く俺をいたずらっぽく見上げた弘樹が…ズイ、と身を乗りだし俺の唇に触れるだけのキスをして。

「先にするのは…僕だから。」

そう言ってクスリと笑った。





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あきゅろす。
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