K I R I B A N
2
可愛い恋人の実家に居候をしてからどのくらい経ったろう?
お世話係と言う名の召使を続けてる俺に、弘樹のオジイサマがたまにこうしてちょっとした自由時間をくれるようになった。
最初の頃じゃ考えられないような…あの人なりの最大の譲歩なんだろうな?
高い空を見上げてそんな事を思った。
「おいってば。」
制服の袖をクッと引っ張られてそっちに視線を落とす。
すると俺の隣りを並んで歩いている可愛い弘樹が…唇を尖らせ俺を見上げていて。
「話、聞いてないだろ!」
目が合うなり怒られた。
「あ、ゴメン。」
「ゴメンじゃない!」
すぐさまのツッコミの後、むくれた顔した弘樹は慌てる俺をギッと睨みつけて。
「こうしてる時間がもったいないだろ!」
プンプンと怒り俺の袖口を掴んだまま歩き始めた。
せっかくの久々の自由時間。
デートがてらの買い物もいいなぁ…とか色々考えてたけど。
「弘樹的にはこの後の予定なんて考えてたりしてんの?」
前を歩く華奢な背中に問う。
すると袖を掴んだままの細い指先が一瞬ピクリと動き…何事もなかったかのように変わらず歩き続けて。
「別に。僕はただ…どっかでゆっくり出来れば……」
ゴニョゴニョと呟き弘樹は赤くなった顔を俯かせた。
強気な弘樹がたまにこうして見せる仕草があまりにも可愛くて…俺はいつも抱き締めずにはいられなくなる。
もちろん今も例外じゃなく。
「わっ!ちょっ、ゆう!?」
学校からの帰宅途中の列だなんて気にもせず、前を歩く愛しい弘樹を背中から抱き締めた。
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