K I R I B A N

‐良介SIDE










…不味い。

腕時計に視線を落としながら足早に休憩室へと向かう。

俺達の暮らす寮の管理人の多田さんに呼ばれて管理人室に行ったものの…まさか痴話喧嘩に巻き込まれるとは思わなかった。
ちょっとした用事だったのでと芹を置いてきたが…まさかこんな目に遭おうとは。

駆け足で廊下の角を曲がり開放されている入口から中へと走り込む…と。

「あ、大葉!」
「えっ!?」

楽しそうな春日部と…そんなヤツに後ろからはがい締めされている俺の恋人がいた。

「…どうしたんだ?」

背を向けている二人に…訝しみながら近付く。

「芹…?」

そしてニヤニヤ顔の春日部の向こうの芹に声をかけた。
…すると。

「ホラ芹。お待ちかねの大葉だよ?」

そう言った春日部ごと振り返った芹…の…?

「芹…その髪…?」

少し長めだった前髪が額の上でちょこんと結ばれ淡い茶髪がサラリと揺れる。
肌理細やかな肌が恥ずかしさにかほんのり赤く染まり…なんとも可愛らしい。

「芹…可愛いよ。」

伸ばした指先でそっと額に触れる。
…と、瞬間顔を更に真っ赤に染めた芹がその茶色の瞳で俺を見上げて。

「…変じゃない?」

「可愛いよ。」

そう答えた俺を見つめて嬉しそうに笑った。





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あきゅろす。
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