K I R I B A N
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何が何だか…ってゆーか…あれから数時間が経った今だってまるっきり意味が分からない。
アクシデント的な会議室での…クラス委員達の前での恋人宣言の後、笑顔の千田くんと勢いで友達になった。
そしてすぐ、逃げるようにその場を後にして…今は寮の大葉の部屋の前でドアの鍵が開くのを待ってるとこ。
「なんで俺だったの?」
「前に芹が会議の最中に乗り込んで来たろ?その時に是非ともお友達になりたいと思ったのだそうだ。」
「じゃあ何で俺に直接言って来ないのさ?」
「さあ…恥ずかしかったんじゃないか?」
「…なのに大葉をデートには誘えるんだ?」
カチャン。
鍵の開く音と同時にドアが開かれ…俺は大葉の返事も聞かずズカズカと部屋に入り込むとすぐにベッドに腰を下ろした。
「…デートの約束じゃないぞ?」
「……。」
黙ったまま頬を膨らませて恋人をジーッと見つめる。
「…だから…。」
「……。」
ガン見していた俺の恋人が小さな溜め息をひとつ吐いてすぐ側に来て…唇に触れるだけのキスをしてきた。
「彼の親父さんがオケを持っててな。」
桶?
…ん、違うな…多分オーケストラ…?
「…で、一度芹と一緒に観に来て欲しいと言われたんだ。」
「…初耳。」
「まだ言っていない。…すまなかった。」
ペコンと頭を下げられて戸惑っちゃう。
だってさ?
俺を知らない人に俺を誘って来いって言われても…いつもの大葉だったら絶対にOKなんてするはずないしさ?
…あ、そっか。
「もしかして大葉、普通にオケが聞きたかっただけ?」
俺の声に大葉はビクッと肩を揺らした。
…全く…ホントに正直者なんだから。
「俺を連れてけば…大好きなオケ、聞けるもんね?」
ちょっと意地悪く言うと大葉はボリボリと頭をかいて苦笑いを浮かべてみせた。
惚れた弱み、というんだろうね…俺はこんな大葉にとっても弱い。
だけど、今回はちゃんと言わなきゃ!
「でもさ?もしかして…それが千田くんの作戦で実は俺を狙ってたりーとかだったらどうすんのさ!」
「大丈夫だ。」
間髪入れずに答える大葉をガン見。
「大丈夫…って何が?」
「俺が一緒にいるから大丈夫だ。」
「…もし俺が…千田くんの事好きになっちゃったりとか…」
「有り得ない。」
なんで??
自信満々に答えた大葉をまたもやガン見してると…不思議そうに首を傾げた恋人が俺の頬に掌を添えて。
「芹は俺のだから誰にも渡さない。」
「えっ!?」
ドキン!
…って大きく跳ね上がった心臓が口から飛び出るかと思う程に驚いた。
今…?
「お…今…なんと??」
「お前は俺のだから誰にも渡さない。芹が仮に…万が一、億が一にでも千田が好きだと言ってもそう簡単には諦めてやらない。」
ドキドキと高鳴る胸に掌を添える。
…と、その手の甲に大葉の大きな掌が重なって。
「…オケが観たかったのは事実だ。勿論、お前を守りきる自信も…芹に愛されている自覚もあったからだ。けど芹に相談しなかったのは俺の失敗だな?芹…すまなかった。」
そう言ってペコンと下げた大葉の頭をギュ…って抱き締める。
「おぉば…。」
抱き込んでた腕が外されて…やんわりと抱き締め直された。
「芹…好きだ。」
いつもより低く響くその声に胸が高鳴る。
ドキドキする鼓動までが大葉を好きだと言ってるみたいでまたドキドキ。
「…いいよ…許してあげる。でもね、内緒はやだよ?」
上げた顔のすぐ側には…俺の大好きな大葉の優しい笑顔があって…。
「約束する。」
そう告げた唇が俺の唇に触れ…ゆっくりと深いキスへと変わっていった。
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