K I R I B A N





五時間目の授業が終わりプチ連絡会のHRが終わるとすぐ、俺の恋人は会議に出席するため校舎最上階の会議室まで出掛けて行く。

その横にピッタリとくっついてそこまでの道程を並んで歩くのが俺の放課後の楽しみのひとつになってるんだ。

「でねっ…」
「そうか。」

俺のつまんない話を楽しそうに聞いてくれてる大葉の笑顔につられて…なんとなく、なんとなく手を繋ぎたくなっちゃって。

伸ばした右手で…そっと大葉の左手に触れた。

「大葉委員長!」

突然後ろからかけられた声にビクッとして振り返る…とそこには。
サラサラな茶髪をなびかせて笑う…可愛い系の見知らぬ人がいた。

「千田。」

「こんにちは!」

この会話だけでピンときちゃう。
多分この人は…大葉に好意を持ってる。

「この前の話、考えてくれました?」

「ああ。丁度空いているから…千田さえ良かったら。」

「ホントっ?嬉しい!」

…もしもし?
なんなのこの会話は!

俺の耳にはデートの約束とかに聞こえるんだけどっ!!

頭にカーッて血が上って繋ごうと戸惑っていた大葉の手をギュッと握りしめた。

「大葉…!」

俺を見下ろす大葉はいつもと変わんない優しい瞳をしてて…。
これでもし本当にそんな約束をしてたりしたら俺は絶対人間不信になるんだからっ!
…なんてジィッと大葉を見上げた。

「どうした?…あ、五組のクラス委員の千田有里くんだ。」

そう言って大葉が隣りの…千田くんを紹介してくれて、相手にされたお辞儀に俺も慌てて頭を下げる。

「こっちは俺の…」
「恋人さんなんですよね?いつも委員長がお世話になってます。」

ニッコリと微笑むその顔とセリフに…なんか勝手に体温が上がってく。

「はいっ!恋人です!」

「恋人さんでもここから先は立ち入り禁止ですからね?さ、委員長行きましょう。」

俺の恋人宣言をさらりとかわした千田くんが大葉の腕を取って会議室の中へと引っ張る。

その逆の腕をワシッと掴んだ俺は唇を尖らせて愛しい恋人を見上げた。

「…どうした?」

どうしたもこうしたも…この状況で俺を置いて行こうってゆーのかっ!
プウッと膨らました頬に気付いたのかクスッと笑った大葉の大きな掌がそっと触れて…俺の唇に柔らかい唇が重ねられた。

「行ってきます。」

「う…はい!行ってらっしゃい!」

キスひとつで機嫌が直っちゃう俺もどうかと思うけど。
優しく笑って手を振ってくれる大葉に振り返して…その目の前で会議室のドアが閉まった。





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あきゅろす。
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