K I R I B A N

‐智SIDE










仕事が終わった後だというのに…俺はまた売り場を歩き回りながら棚の整理なんかをし直すハメになっていた。

「これは?さっき入ったばっかのフリース。」

「おお…いいな。」

その向かい側の棚からセーターを取り出して見せて。

「これは先週入ったやつだけど結構人気あるんだよ。」

「お…これもいいな。」

…さっきからこの調子。

我が親友の良介はセンスは悪くないんだけど…服にはさほどの興味もないらしい。
良介の大事な恋人へのプレゼントを探しているはずなのに…なぜか俺と春日部とで『洋服プレゼン』をしている。

「だーっ!もう大葉!真面目に探す気あんのっ!?」

のらりくらりと躱す良介へのイラ立ちが募ったのか、春日部が顔を真っ赤にして怒りだした。

「ある。俺は至って真面目だ。」

「……。」

真剣な表情で返され文句をつぐ事が出来ず春日部が黙る。
そんな二人を見ながら俺は苦笑いをした。

「良介…予算とかあるのか?」

「そうだな…二万円くらいなら。」

「おー!大奮発だね!」

予定予算額に春日部が飛びついた。

「じゃあさ…こっちのジーンズとパーカーにしなよ。これはホント人気あるし俺も好きだからおススメだよ?」

そう言って…ストーンウォッシュ加工のブラックジーンズとオレンジ地にブラウンのパイピングの入ったパーカーを広げて見せる。

「あ、これ可愛い!こーゆーのちょっと珍しくていいじゃん?」

春日部も賛同してくれて二人でアレコレと盛り上がっている…と。

「そうだな…このオレンジは芹っぽくていい。よし、これに決めた。」

ホントに自分の意思なのか怪しいもんだけど…ニッコリと笑う良介があまりにもいい顔をしていたので良しとしよう。

今さっきの二点を持ってレジに入り会計を済ませて…勝手知ったるなんとやらでプレゼント用の簡易箱を取り出し包装を始めた。

「上手いもんだねぇ。」

その横で頬杖をついた春日部が俺の手元を見ながら呟く。

「だいぶ慣れたからまだいいんだけど。」

そうとだけ返すと…神経を集中してラッピングのシメに入った。





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