K I R I B A N
‐We are Family!
廊下で立ち話もなんだからと奥部屋に入った俺達は、久遠のいれてくれたそれぞれの飲料を飲みながら"涼菜ブランド"をいただく事にした。
出来たてのその包みを開きツヤツヤな光沢のブラウニーをジッと見て…ひとつ口に頬張る。
その俺の表情を食い入るように見つめる楓がやたらと可愛かった。
それを久遠が頬張り俺サマが手を付けて…残った一番デカいのを楓が美味そうに食べて満面の笑みを浮かべる。
…が、楓には苦かったのかすぐさま甘甘使用のカフェオレに手を伸ばしていた。
「涼菜ちゃんたら可愛いんだよ?『いつも拓ちゃんと良ちゃんがお世話になってるから』ってレシピ作りに徹夜しちゃったみたいでね。」
その様子を思い出したのか久遠がクスッと笑って愛しそうな顔をする。
パティシエ志望の涼菜ちゃん指揮の元、作ったのは料理の腕前ナンバー1の久遠と初心者マークの楓。
素晴らしく美味く感じるのは…みんなが俺の為に一生懸命してくれたからなんだと思うと嬉しくて口元が緩んでしまった。
「後で俺の携帯渡すから…お礼メール、してあげて?」
可愛い義妹を想う久遠の笑顔はいつもより大人っぽかった。
しかし…その笑顔が気に入らないのか俺サマは少しムッとした顔でイキナリ久遠にキスをして。
「そんな顔で他人を語るな。」
「は?…自分の妹にまでヤキモチ焼かなくたって…」
言い掛けた唇を塞ぎいつものようにイチャイチャし始めた。
半ば呆れつつ、俺と楓は自分達のカバンを小脇に抱えて。
「俺ら帰るんで好きなだけイチャついて下さい。久遠、後でメールしてくれ。」
そう言い捨て、真っ赤な顔で固まっている楓の手を引いて購買部を後にした。
静かな廊下を歩きながら隣りの楓をチラと見て。
「…ありがとな?」
そんな俺の声に嬉しそうに笑い楓が。
「佐古が喜んでくれて…良かった!」
屈託なく笑う恋人が愛しくて…こんなような心温かな時間をくれた【仲間】の思いも嬉しくて。
いつの間にかこの【仲間】と言う名の【家族】の存在を大切に思う自分がとても幸せに感じられた。
出来るなら…もう少しだけでもこのぬくもりの中にいたい。
そう思わずにはいられない程に…俺はこの【家族】とそして愛しい恋人を心底愛しているんだ、とそう思った。
「佐古?」
キョトンとした顔の楓を見下ろし唇に自分のを重ねて。
「楓を…好きになって良かった。」
その華奢な身体を抱き締め頬にキスをした。
‐END‐
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