K I R I B A N





「ちわす。」

購買に入りすぐ正面の主に挨拶をする。

「おう。」

開いたノートパソに打ち込みをしながら返事をする俺サマの横を通り過ぎ奥部屋のドアノブに手を掛けた。


ガタ。


「…ん?」


ガタガタッ。


「…おいおい?」

この手応え。
確実、ドアに鍵がかかってんだけど。


ドンドン!


「おい!なんの冗談だよ…楓?久遠!」

木製のドアを叩き続けると中から楓の楽しそうな声が聞こえて。

「ちょっとだけ待ってて…すぐだから!」

…頭の中が真っ白になった。

「…楓!」
「ウッセーぞ。」

背後からの声に振り返ると俺サマが眉間にシワを寄せて俺を睨んでいた。

「ちょっと待てっつってんだから待ちゃいいだろうが。」

「…けど鍵なんて掛けているんですよ?」

「別にいいだろう。」

…おかしい。
嫉妬心の塊なこの人がこんなにも寛大だなんて。

訝しみジッと見てる俺を俺サマが呆れた顔で見返して。

「相手が柊や良介なら許さんが西野なら大丈夫だろう。…つか他人に欲情するヒマなんてナイくらい抱いてるから智がどうこうなるなんて有り得ねぇから。」

ストレートな下ネタをして俺サマが視線をパソコンに戻した。
相変わらずメチャクチャな理屈だが…外れていないのが不思議な所で。

溜め息をひとつ吐きドアに背中を向けると俺サマの隣りの椅子に腰を下ろしてまたひとつ溜め息を吐いた。





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あきゅろす。
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