K I R I B A N
15
‐佐古SIDE










…目の前の光景にその場に居合わせた全員が息を飲んだ。
誰かの投げた布団が…事もあろうか戻ってきた俺サマの頭上に乗っかっているんだから。

そのままズルズルと滑ってく布団が足元に落ちるまでを冷ややかな視線で見送ってから…俺サマはすわった瞳をこっちに向けて。

「…一体何時だと思ってんだ。」

滅多に聞かない程の低い声を上げた。

「ごめんなさい拓真!最初に始めたの、俺なんだ!」

焦り顔の久遠が不機嫌オーラを放出している俺サマに駆け寄る。

…と。


チュッ。


…いきなりその唇にキスをした俺サマが愛しげに久遠の髪を撫でた。

「遊ぶのは別に構わねぇが時間を考えろっつの。もう日付変わってんだぞ。」

口調は優しいのに俺達を睨みつける視線は鋭い。
…全く。
相変わらず自分のモンにだけは寛大な人だ。

そんな俺サマらしい姿に苦笑いをしながら全員で『ごめんなさい』と頭を下げる。
すると俺サマが…口の端を上げて小さく笑った。

「そんな訳で支度しろ。外に行くぞ。」

『は??』

急な話に戸惑う俺達をよそに久遠の手だけを引いたあの人はさっさと部屋から出て行ってしまい…俺達は慌ててその背中を追った。

《静かにな?》

部屋を出る寸前、後ろを振り返り一番危ない芹沢に向かってそう言い唇に人差し指を添えてみせる。
…すると。

「分かってるよ佐古ぉ!もう夜中だから静かにって…もがっ!」
《それがうるさいってーの!》

…声のトーンそのままで述べた芹沢の口を春日部が両掌で塞ぐ。
本当に二人は素晴らしくいいコンビだ、と思わず苦笑いが出てしまった。

《じゃあ行くぞ…》

頷くみんなを見ながら静かに引き戸を開けて…俺サマ達の後を追った。





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あきゅろす。
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