K I R I B A N
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‐拓真SIDE










実録『我が弟の公開告白』が終わるとすぐに晩飯が始まり…食い終わったヤツラをソッコー追い出し、今はまったりと食後の寛ぎ中。

「はい、コーヒー。」

「おう、サンキュ。」

座敷に座ったままの俺の目の前にいれたてのコーヒーが置かれ、返事もそこそこに信楽焼きのマグを手に取った。
俺の行動に小さく笑い立ち上がりかけた愛しい恋人の手を握って引き寄せ…唇を重ねる。

「…ここに居ろよ。」

離した唇にもう一度触れようとした…ら。

「コラ。お前も片付けを手伝えっつの。」

和装からジャージに着替えた由妃さんがお膳を片付けながら睨みつけてきた。

「…はいはい。」

「あ、拓真!俺がやるからいいよ?」

片付け途中の膳を重ねて持ち上げる。
そんな俺を見上げて立ち上がろうとした恋人を手で制して。

「お前は飯の支度してくれたんだから片付けは俺がやる。すぐ戻るからイイ子にしてろよ?」

開いている左手で髪を撫で頬に触れると唇に軽いキスをして、また髪を撫でた。

頬を赤らめる智があまりにも可愛くて…つい襲いたくなるのも習慣になっている気がする。

「拓!」

「はいはい。」

座敷の入口で膳を抱え目くじらを立てている由妃さんの後を追い、キレイに装飾の施されている廊下を並んで歩いていく。

「しかしアンタら…兄弟揃ってホモになるとはさすがのアタシもビックリしたわ。」

苦笑いをする美形な横顔をチラ見して厨房に足を進める。

「俺は元々バイだから。良介はノンケだったが…たまたま好きになったのが芹ってだけだ。」

洗い場に入れた食器を洗い始めるとその横で由妃さんが濯ぎに入った。

「しっかしあの芹ちゃんはいいキャラよね?」

ニヤニヤしている由妃さんにつられて俺も顔が緩む。

「智ちゃんも可愛いし…アンタらの見る目、悪くないわよ。」

緩んだ口元をキュッと上げてチラと横に視線を向けると…気の強そうな瞳がコッチを見ていた。

「頑張んなさい。」

「…言われるまでもねぇよ。」

身内からの言葉は…何よりも温かくて妙に照れくさい。
皿を洗い終え、返事もそこそこにその場を後にした。





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あきゅろす。
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