K I R I B A N

‐良介SIDE










…唖然。
呆然…。



部屋の中心でのラグビー並みなタックル大会にも驚いたが…まさかこんなカタチで由妃さんにカミングアウトするハメになるとは。

「…あー…っと。」

ボリボリと頭をかきながら足元に荷物を下ろし部屋の真ん中にできている人の山に視線を向ける。

「…芹。」

そう呼ぶと山の頂上の春日部がどいて、佐古と柊もどいて…一番下の芹が咳き込みながら身体を起こした。

連中からのタックルで我に返ったのか…少しばかしシュンとなっている芹の姿はまるで叱られた子供。
顔を上げれずモジモジとしている恋人に向かって右手を差し出し…。

「おいで…芹。」

上げた顔がホンの少し緩んだ。
それでもバツが悪いのか唇を尖らせ頬を赤くしながら立ち上がるとゆっくりゆっくりと近付いてきて…いきなり早足になったと思ったら差し出した俺の右腕にガバッとしがみ着いてきた。

よしよし、と髪を撫でてから芹の肩を抱いて背後の由妃さんの方を向き。

「…由妃さん。こちらは芹沢太一って言って…俺の恋人。…芹?」

声をかけると芹は慌てて俺の腕から離れてその場で『きをつけ』をする。

「芹。こちらは由妃さんって言って…ウチの母親の親友で俺達兄弟妹もお世話になってる人だ。」

「あっ…の…スイマセン俺…りょーすけくんと…あの…っ!」

「………プッ。」



…プッ?



「あっははは!」

…気でもふれてしまったのかと思う程に笑う由妃さんにみんなも呆然。
状況が掴めずチラと拓真の顔を見ればヤツは口の端を上げて薄く笑っていて…。

…もしかして?

「…騙したな?」

「いんや。俺はなんも言ってねぇぜ?」

そしてまたニヤニヤ。
一気に顔が熱くなった。

「バカね良!んなのとっくに知ってるわよ!アンタら家族とアタシがどんだけ長い付き合いしてんと思ってんの!」

…和美か。
涙を流して笑う由妃さんを見ながら…和美に土産なんて絶対に買って帰らないと心に決めた。





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あきゅろす。
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