K I R I B A N

‐楓SIDE










放課後の静かな廊下を歩きながら隣りのカレシを見上げて…相変わらずのキレイな横顔にキュンとしながら佐古の声に相づちをうった。

今日と明日は佐古のバイトがお休みで…しかもなんと念願の連休!
最近バイトが忙しいみたいで佐古と一緒にいれる時間が前よりずい分と減ってしまった。
だから…って言うのもおかしいけど、今日くらいは側にいて欲しい。

そんな風に思って…繋いだ手に力を込めた。

「どうした?」

僕を見下ろす澄んだ茶色い目に胸がときめく。

「ん…なんでもない。」

熱くほてった顔を見られたくなくて窓の外に向けた。

『大葉の笑顔だけでご飯三杯は食べれるよ!』
芹沢が良く言う大好きなカレシ、大葉への想い。
今の僕にはこの意味が良く分かる。

だって僕は…
隣りで笑ってる佐古の甘い笑顔だけできっと苦いコーヒー三杯は飲めちゃうもん。

…とかって考えてると。

「なに一人で赤くなってんだよ?」

俯いた僕の顔を覗き込み佐古がニヤリと笑った。

「えっ…なに…」

「んな無防備な可愛い顔見たら…襲いたくなっちまうだろ?」

繋いだ手を引き温かな胸の中に抱き入れられる。

「さっ…」

「…キスするぞ?」

真剣な佐古の声に…目を閉じ顔を上げる。

…と?
どこからかブーブーと、低いバイブの音が聞こえてきた。

「チッ…いいとこなのによ。」

僕を抱き締めたまま外した右手が佐古の後ろに回り…シルバーの携帯が現れる。
フラップを開くとめんどくさそうな顔して耳を寄せて…。

「あ?…待てコラ…って!?」

苦い苦い顔をした佐古がフラップを閉じ僕を見つめて額にキスをくれた。

「…この先はお預け。」

「えっ!なんで…??」

驚いて見上げた佐古が苦笑いをしてボリボリと頭をかきむしる。

「緊急召集。これから寮に戻って旅…らしい。」

「はっ?た、旅っ!?」

あんぐりと口を開いてる僕の頭を撫でて…佐古が大きな溜め息を吐いた。





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あきゅろす。
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