K I R I B A N

‐拓真SIDE










慣れない四駆を転がし耳障りなエンジン音を聞きながら学校の敷地内に戻ってきた。

俺のより車幅も長さも勝手も違うから必要以上に疲れ、車を降りるとすぐに肩を回して大きく伸びをする。

そのまま教職員用出入り口に入りスリッパに履き替えて、俺さまの城…良介曰く『いかがわしい部屋』と名付けられた場所へと向かった。

「お帰り、拓真!」

購買のガラス戸を開くとそのいかがわしいグッズにハタキをかけていた智が振り返ってやんわりと笑った。

「ああ。」

短く応えてその華奢な身体を抱き寄せ唇にキスをする。

「もう…っ!」

赤くなった頬に唇を寄せサラサラな髪に指を通してもう一度キス。

「変わった事、無かったか?」

「うん…、…あ!良介がきてるよ。」

「…珍しい。今日は会議ないのか?」

他愛ない会話をしながら奥部屋のドアを開けた。

「あ、ニイサン!」

「お帰りなさいボス!」

窓際に座る春日部と柊に手で応えてちゃぶ台前のバカップルに視線を向ける。

「おう。」

短く声をかけ持っていた車の鍵をちゃぶ台の上に置く…と。

「…車、変えたのか?」

目敏い良介がそう言って鍵にぶら下がっているストラップをいじった。

「…ちょいと野暮用に車借りた。」

「へぇ…?」

…すると。

「ニイサンと久遠はこれからラヴラヴデートなんだもんね?」

冷やかすような春日部の声にフッと笑って応える。

「そう。だからお前ら早いトコ解散しろよな?」

パソのディスプレイを閉じ戸締まりを始めた俺に…芹が。

「デート!?俺も行きたいですーっ!!」

そう叫び戸締まりの手伝い始める。
ヤツの満面の笑みと呆れるほどの行動力にひとつ溜め息を吐いた。





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