K I R I B A N

‐良介SIDE










梅雨の合間の良く晴れた金曜の午後。

今日はクラス委員の会議もないのでと、芹を連れて久し振りにこのいかがわしい購買部の奥部屋へとやってきた。

「オッ!弟!お前がココに居んの、なんか久し振りじゃね?」

窓際に座る春日部に背後から抱き着いていた柊が顔を上げて二ッと笑う。

「ああ。たまには来ないと忘れられるからな。」

鞄を置いてちゃぶ台の側に座るとその隣りに芹がピッタリと張り付き俺の顔をジッと見つめて。

「俺は忘れないから大丈夫だよ!」

…と、言って満面の笑みを見せた。

その発言に笑い出した柊と春日部を見ながら、芹が大きな瞳をひたすらパチクリとさせる。
こういうのが芹の果てしなく可愛い所なんだよな…。
胸がキュンとした。

「お茶が入ったよ。」

備え付けのシンクでこのバカ話を聞いていた久遠がトレイに四人分の飲み物を乗せ笑顔でやってきた。

「わーい!久遠のココア久し振りっ!」

差し出されたマグを受け取った春日部はさっきまでの笑いではない、ほんわりとした笑みを浮かべる。
勝気な春日部にこんな穏やかな表情をさせる久遠は…やはりただ者ではない気がしてならない。

「ヒメ、俺のは?」

「はいよ。特濃牛乳。」

手渡されたコップを受け取った柊と春日部が笑顔で飲料を飲み干す姿は…さながら子供みたいで。
…って事は久遠は母親?
そんな事を思って…笑いが出た。

「んだよ弟!思い出し笑いなんてキショイぜ!」

悪態をつく柊の、コップから離した口の回りにはクッキリと牛乳のヒゲがついていて…。
その間抜けな顔を見、一瞬固まったみんなが一斉に笑い出した。

「なっ、なんだよ…!」

当の本人はそんなのには気付かず怒っていて…。
笑っているみんなの顔を見ながらこの楽しい時間は何物にも変えられない…そう思った。





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