K I R I B A N






「それじゃあ…いっただきます!」


テーブルを囲み手合わせを無理強いされ…みんな揃っての『いただきます』の挨拶をする。

「はーお腹空いたね!」

満面の笑みを浮かべる芹にみんな同時に頷く。

…そりゃそうだ。
時間はとっくに八時半を回り…窓の外はすでに真っ暗。
さすがにこの時間まで待たされると…キツいもんがある。
人知れず溜め息を吐いた。

「ニイサン、おかわりどうですか?」

斜向かいに座る西野がぎこちない笑顔で小首を傾げた。

「ああ…悪い。」

差し出されたヤツの手に空の茶碗を乗せると小さく笑ってメシをよそってくれる。

最初にちょこっとよそってからまた少し足して…と、様子見している様が西野らしくて思わず笑いがでた。

「もー西野!どのくらい入れるのか分かんないならニイサンに直接聞けって!」

春日部のツッコミに顔を赤くした西野が…半分程よそった茶碗を俺によこしてみせて。

「このくらい…ですか?もう少し入れますか?」

そう言ってまた小首を傾げた。

「ワリィがもう少し足してくれ。」

…と言った俺の方にしゃもじですくったメシを見せて。

「このくらい?」

「もう少し。」

「…もっと?」

「あ…っとストップ!」

一生懸命なのは分かるが…真剣な顔してメシをよそっている西野の姿は妙にツボにハマる。
それは他の二人も同じなようで…メシをよそい終えホッとした表情のヤツを見ながら春日部と芹が腹を抱えて笑いだした。

「なんだよーなんで笑うのっ!」

顔を真っ赤にしながら拗ねたように言う西野にまたもや笑いの渦。

「もーホント西野らしいよっ!」
「ねーっ!」

楽しげに笑う二人につられて弄られてる西野も膨らませた頬を緩めて楽しそうに笑う。

モチロン俺も白米を頬張りながら口元を緩めた。

全く…
どいつもこいつも例外なく可愛いヤツラだ。
コイツらも…そのオトコ共も俺にとっては大事な『他人の身内』。
血筋なんかじゃなくそれよりももっと濃い絆で結ばれている気がする。

「みんな…もうバイト終わったのかな?」

笑い泣きしている春日部が涙を拭いながらそう言い、芹と西野はゴソゴソと携帯を取り出した。

そんなヤツラをチラと見ながら…。

「面倒くせぇから…ヤツラ呼んじまえよ。」

そうとだけ言い椅子から立ち上がると食い終わった食事の皿をシンクへと運ぶ。

「いいんですかっ!?」

その俺の背中に楽しそうなヤツラの声がかけられ…散々ハシャギまくってその相手共に連絡を入れ始めた。

まあ…たまにはいいだろう。
こんな風に気のおける仲間達と共に過ごすのも悪くないから。

可愛い身内共一人一人の顔を思い浮かべて…皿を洗いながら、口元を緩めた。









‐END‐


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あきゅろす。
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