K I R I B A N





ニコニコニコッ!


…と凄まじく楽しそうな笑みを浮かべてる我が弟の彼公、芹を見下ろす。

…否。

「…お前…なんで…」
「お兄さま!ご飯にしますか?それともお風呂っ??」

…なんて、意味不明な言葉を発する芹をただ黙って見ていた。

するとヤツは。

「取りあえずコレ、持ちまっす!」
「ちょっ…オイ!待てコラ、芹!」

俺の手からパソを奪った芹が満面の笑みで走りだし…俺はそのあとを慌てて追いかけた。

「バカやろ!それは俺の大事な商売道具だ!手荒にすん…」


ガンッ!


ーって!?

ヤロー…言ってるそばから俺のパソを思いっきり机にぶつけやがった!

「芹ッ!テメッ…」
「みんなー!お兄さまが帰ってきたよー!!」

…は?

キッチンのテーブルまできて…シンクにいる他のヤツに気付いた。

「お帰りなさい、ニイサン!」
「遅かったんですねー!お疲れさまです!」

「西野…と春日部…?」

全身から力が抜ける。

その耳元で俺のカワイ子チャンが楽しそうに笑い…繋ぎっぱなしだった携帯に気付いて握り直した。

「笑い事じゃねぇよ。」

『ごめんね?でも楽しかったんだもん。』

尚もクスクスと笑う智の声を聞きながらリビングに入りソファに腰を下ろす。

「なんなんだよこれは。…つーかお前、今どこにいるんだ?」

『ん…実はね…。』


智の話に依ると…

柊達がバイトに行ってしまい淋しそうだったヤツラをココに呼んで晩飯の支度をしていたらしい。
…と、智の叔父さんの智史さんから電話が入り急遽アチラの家に行く事になったのだと。

「で…なんでアイツらをココに置いてったんだよ。」

憮然としている俺の耳元に心地良い智の声が流れ込む。

『みんながね…拓真が帰ってきて真っ暗な部屋に入るのは可哀想だって言うんだ。』

「…なんだよ…それ。」

『その気持ちをくんであげて?』

…んな事言われて…邪険に扱うなんて出来やしねぇだろうが。
ソファに深く沈み込み…天井を見上げて溜め息をひとつ吐く。

「あいよ…リョーカイ。」

受話器越しの智の声がホッとしたように緩んだ。
甘いな、智チャン。

「その代わり…」

『その…代わり?』

「お前が帰ってきたら…一回や二回のセックスじゃ済まねぇからな?」

そう言った声に智はまたクスクスと笑い…。

『うん…覚悟してる。』

…と、言った。

俺の言葉の意味を正しく理解している智は…マジすげぇと思う。
これは最早、愛以外のナニモノでもないな。

緩む口元を結び直し立ち上がってキッチンに向かい…。

「早く帰ってこいよ。」

『うん…ありがと。』

「とも。」

『ん…?』

自分の携帯の通話口に軽くキスをし…。

「愛してるよ。」

そう言って…電話を切った。





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あきゅろす。
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