K I R I B A N






薄暗い道を直走り…やっとの事で我が家が見えてきた。

車載の時計に目をやれば時間はとっくに七時を回っている。
そりゃ…腹も減る訳だ。

今日は珍しく仕事がバタつき放課後に愛しい智の顔を見損ねちまった。
おかげで身体から疲労感が抜けない。
…こんな時アイツの大事さが身に染みて分かる。
たとえセックスしなくても…側にいるだけで全てが癒されるって一番大事な事を。

…ま、ヤるに越した事はないが。



敷地内に入り車を駐車場に停めパソを小脇に抱える。
財布と携帯をケツポケットにしまい車を降りると施錠を確認して愛車を後にした。

連絡…入れ忘れてたな。

『帰るコール』してる時間も惜しくて車に飛び乗ったが…今からでも遅くないか?

エントランスを抜けて自宅を目指しながら携帯のフラップを開いて…コール。

静かな廊下に俺の靴音だけが響き渡り…丁度部屋の前で。

『…もしもし?拓真?』

「ああ。遅くなった。」

口元を緩めつつ玄関のチャイムを鳴らした。

『お疲れさま。ごめんね拓真…ちょっと遅くなるけどちゃんと帰るから…。』

「…は?」

カチャン、とロックの外れる音がしてすぐにドアが開き…。

『あれ…もしかして…』
「なに言って…」

「おっかえりなさぁい!お兄さまっ!!」

中から…耳に届いた柔らかな声の主じゃない天然コゾーが飛び出してきた。





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あきゅろす。
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