K I R I B A N






飛鳥の作るご飯はとても美味い。

それもこれも…一人暮らしをしている僕に美味しい物を食べさせたいのだとアイツが一生懸命に練習を重ねた成果だから。

「美味かったよ。ごちそうさん。」

「はいっ!お粗末さまでした。」

食べ終えたタッパを片付けながら頬を赤らめる飛鳥をジッと見つめた。

華奢な身体と童顔な顔立ち。
髪はサラサラの黒髪で瞳は深いブラウン。
男子校にいてこのレベルなら確実にあの何たらランクの上位になれるな?

…なんて。

テツが吹き込んだあのつまらない話を思い出し頭上の青空を見上げた。

「クンちゃん…?」

二人きりになると僕の名を呼ぶ呼び方が変わる。

「なんだ。」

「なんか…あった?怖い顔してるよ?」

不安げに眉を寄せる飛鳥を見つめて一段とデカい溜め息を吐く。

「オレが悪いの…?」

途端にシュンとしょげる飛鳥が可愛くて…ガラにもなくその頭を撫でてやった。

「誰がそんな事言った?早とちりすんなよ。」

僕の宥める声に苦笑いする飛鳥は…やっぱり可愛い。
コンクリについている小さなその手に僕のを重ねて…さっきのテツの話を思い返してみた。

僕は…飛鳥の事、どう思っているんだろう。
ぐるぐると巡る思い。

僕の側にはいつも飛鳥がいて…僕の全てにアイツは必要不可欠で…。

「く…クンちゃ…」

握った飛鳥の手が熱い。

指の合間に自分のを入れて絡ませ…その小さな身体をグッと引き寄せた。

「クン…」

「…もしかして…。」

やんわりと抱き締めた飛鳥の首筋に顔を埋めて…かぎ慣れたシャンプーの香りに瞳を閉じて。

「僕は…オマエの事が好きなのかもしれない。」

僕の言葉に抱いてる飛鳥の身体がビクッと震えて…。

「…ホント…?」

微かに聞こえる飛鳥の声も…震えていた。





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あきゅろす。
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