K I R I B A N






フゥ…と息を吐きだす度、風にそよいだ白い煙が風下へと流れていく。

それを横目で追いながら…僕は小さく溜め息を吐いた。

「健康のため吸い過ぎには注意しましょう。」

ゴロンと横になっていた足元で聞き慣れた声がして…僕と爽やかな青空の間にニヤ付いた見飽きた顔が現れた。

「…なんだよ。」

「おーおー…優等生が授業バックレて学校の屋上で喫煙タイムですか?」

「悪いか。」

そう言い身体を起こして僕の友人…木之下哲志を睨み付ける。

「悪かぁねーけどさ。今度は俺も誘ってよ。」

「イヤだね。…つかお前出席日数足りてないんだからさっさと授業に戻れよ。」

「ぁんだよクンちゃん!俺とクンちゃんの仲じゃんかよー!」

「ウゼェ!とっとと戻れ!」

しつこくジャレ着くヤツのケツに蹴りを入れ階段上の僕の聖地から排除した。

「ったく乱暴だな、クンちゃんは!」

「ルセッ!」

あれだけやられても笑顔なテツに半ば呆れつつ…ケツポケットから携帯を取り出してメール画面を開く。
『ま』行を表示して…生徒会絡みの名前の一番下【本山飛鳥】を呼び出して…

《いつもの所にいる。》

1行だけ入力して…
送信。

完了を確認して再び横になり…アイツの行動を思い描く。

きっと今、僕からのメールに気付いて慌てて挙手して…
『すいません先生!トイレに行ってきます!』
…とか言って教室を飛び出し…階段を駆け上がる。

一階…

二階…

三階…

…踊り場で、ちょっと一息。

四階…

五階。


バタン!

鉄製のドアが勢い良く開いた音がして…僕の足元の梯子がギシギシと軋んで。

「クンちゃん先輩!」

満面の笑みを浮かべた…飛鳥が顔を出した。

「…ぴったりだな。」

「…えっ?」

「いや…なんでもない。」

梯子を上り終えた飛鳥が横になってる僕の隣りにチョコンと腰を下ろして僕からの指示を待つ。
その様子が犬みたいに見えてなんとなく笑える。

「?クンちゃん先輩?」

キョトンとした顔付きで小首を傾げる飛鳥をチラと見て。

「僕はこれから寝るから…飛鳥、ヒザ貸して。」

ゆっくり身体を起こすと頬を少し赤らめた飛鳥が静かに近付いてきて…黙って"オネーサン座り"をする。
そこにゴロンと横になって…僕は瞳を閉じた。





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