K I R I B A N






「ごめん佐古!遅くなっちゃっ…」
「…なにしてんの?」

階段を上がり終えた楓が笑顔を向けるなり部屋にいる時からのイライラが吹き出してくる。

「え…?ん、根津くんとね…」
「名前はいいんだよ。アイツとなにをやってたかって聞いてんの。」

イカンと思いながらも語尾が強くなってしまう。
…こういう態度をとると楓は畏縮してなにも言えなくなってしまうってのに…。

案の定、眉をキツく寄せ肩を竦めて…小さな楓が益々小さくなってしまって…。

「あの…っ…僕…」

それでも必死に声を上げる姿に胸が痛んだ。

「もういいから。」

ガチガチの楓の手を握り一瞬ビクつく反応に溜め息を吐きつつ、部屋に向かってズンズンと歩いていく。
引っ張ってる足取りの重さにまたひとつ溜め息。

楓の部屋の前に並んで立ち俯いてる部屋の主を見下ろして。

「勉強するぞ。」

そうとだけ告げてドアを引き部屋の中へ楓を押し込んだ。
中に入っても楓は何も言わずただ部屋の中で立ち尽くしているだけで…俺は全身で溜め息を吐くとベッドに腰掛けゴロンと横になる。

「…ごめ…」

か細い声にそっちを向けば唇を噛んでキツく目を閉じてる…まるで叱られた子供のような姿。

イジメてるような気分にもなるが…いい加減こういう展開にも慣れてもらわなきゃだ。
恋人の俺とでさえこれじゃ…お互いの意見を言い合う事さえできやしないから。

温厚じゃない俺にも少しは慣れてくれなきゃ困りますからね。





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