K I R I B A N






「なんスか、そのラム酒増量のチョコっつーのは…?」

普段聞かない商品説明に軽く引きながら発端の二人を見やる。

「ん…あのね…」

「前に一度、間違って酒飲んじまった時のエロい智が忘れらんなくて知り合いに頼んで作ってもらったものだ。」

坦々と述べる俺サマを見ながら…。
この人はきっと久遠の為なら法律だって変えちまうんだろうな…なんて恐ろしい事を思った。

「で?なんでそんな危険物を楓に食わしたんです?」

キッと睨み付けた先の俺サマが眉を少し上げ口の端をつり上げて笑って。

「夕べはそのおかげでイイ思いさしてもらったから、お前にもそれを分けてやろうと思ってな。」

ニヤニヤと笑い久遠を抱き寄せる様は…まるで悪役(ヒール)だな。
全く…と思っていると。

「うっわ!なんだよ西野っ!?」

背後で筋肉ヤロウの慌てる声がして振り返った。

「んー…さこぉ…なんか急に堅く、なったね?」

顔を真っ赤にした楓が横になってる柊に跨がり…しきりにその胸元を撫でていて…。

「ねー…さこったら…?」

「のわーっ!バカ!ヤメロっての!」

「ちょっ…西野っ!」

確実に酔っているだろう楓が、春日部の制止も聞かず自分のブレザーを脱ぎ捨ててネクタイを解き始めた。

「西野。」

その手をガシッと掴んだ俺サマをトロンとした瞳で見上げ、楓がフニャッとした笑顔で笑って。

「にいさん…僕、あの…にいさん……うぅっ…」

…と、泣き始めた。
これは…一体俺はどうするべきなんだ?

「佐古。」

呆然としている俺に掛けられた声に顔を上げる。

「先生には言っとくからこの酔っ払い連れて寮に帰れ。」

「にいさん…そんな事言わないで、下さい…」

柊に跨がったまま俺サマに抱き着いている楓の姿はなんとも言えずムカツク。
自称温厚な俺だっていい気はしない。

「ホラ楓。帰るぞ。」

「えー…やだぁ…」

真っ赤な頬に潤んだ瞳。
こんな顔を間近で見たらさすがの奴等だってオチるかもしんねぇ。
そんな事を思い、抵抗する楓を肩に担ぎ上げて。

「じゃ、帰ります。」

そう言い残し奥部屋を後にした。





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