K I R I B A N





何も語らない拓真に手を引かれて車に乗り…暗闇の中をゆっくりと走り出す。

音のない静寂の中、ウインカーのカチカチという機械音だけが響いていて何となく居心地が悪い。
それでも俺は…拓真のそのキレイな横顔から目を離す事ができなかった。

「…大丈夫か?」

掛けられた声に頷く…と膝の上に置いてた手に拓真の手が重ねられて。

「間に合って良かった。」

そう言って小さく息を吐いた。
同時に信号待ちで車が停まり…握られた手を引かれてその胸の中に抱き寄せられる。

「…たく…。」

「俺はどんな事があっても必ずお前を助ける。だから…俺が着くまではキッチリ逃げとけ。」

低い声で呟く拓真を見上げて頷く。
フッと口元を緩め…唇に触れるだけのキスをくれて…そして。

「俺がちゃんと…お前を見つけるから。」

優しい声に頷きもう一度キスをした。

前方の信号が青に変わり離れてしまった拓真のぬくもりが恋しくて…左腕に寄り添い手を握る。
少し驚いた顔した拓真が優しく笑って繋いだ手をギュッと握り返してくれて。

「お前からなんて…珍しい。」

ほんのり頬が赤くなったように見えるのは…車のライトのせい?

少し緩んだ拓真の頬を見ながら…なんだか俺まで照れくさくなった。





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あきゅろす。
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