K I R I B A N




目の前に現れた人影がユラリと揺れて、小さな…多分タバコだろう光を放ってこっちに近付いてくる。

嬉しい半面マズい、と本能的に感じた。
もちろん俺が、じゃなくこの酔っ払いの人達が。

「たく…っ!ダメだよ!」

叫ぶのと同時に振り上げられた足が俺の腕を掴んでいる人の顔面に直撃!

…するホンの数センチ前で止まる。

「ヒ…ッ…!」

引きつった声を上げたその人が固まり回りの人もピタリと動きを止めた。

「…酒で感覚がマヒしてるかもしんねぇが…俺の蹴りは相当イテェぜ?」

ゴクリ、と息を飲む酔っ払い達。

長い足を下ろした拓真が滅多に見ないような冷たい笑みを浮かべて…。

「感覚が戻ったら悲惨な事になるだろうよ。それがイヤなら…とっとと消えろ。」

低く響く声に怯えた酔っ払い達が俺を解放し慌てて逃げて行った。

その姿が車の遥か向こうに消えそうになった瞬間、拓真の瞳がギラッと光る。
その目はまるで…獲物を狙う黒豹のようで無意識のうちに俺は拓真の細い身体にキツくしがみ着いていた。

「たく!ダメだってば!」

その声が届いたのか、しがみ着いてた拓真の身体から力が抜ける。
変わりに…俺の身体には拓真の腕が回されて、その温かな胸の中に抱き入れられた。





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