K I R I B A N





「…ふふっ…。」

俺サマからの愛の鉄拳がヒットした頭を撫でる俺を見ながら楓が楽しそうに笑う。

「笑い事じゃねぇぞ!」

「だって…あはっ…。」

奥部屋の窓ガラスを割った件は俺サマのゲンコ一発でチャラにしてもらったが…当分の間あの野球セットは使用禁止になった。

「…おっかしいな…。」

校内の階段の最上部。
屋上へと続くドアの前の壁に寄り掛かってデカい溜め息を吐いた。

…おかしいんだよ。

この俺がキャッチボールごとき、出来ないわけなんてないのに…。
考え込む俺の顔を覗き込んで楓がまた笑う。

「…のヤロッ!」

その細い腕を掴んで引き寄せ、そのまま床に組み敷いた。
それでも笑ってるその可愛い唇を俺ので塞ぎ…ゆっくりと離して。

「笑い過ぎ。」

「だって…佐古ったらホントに可愛いんだもん。あんな…大暴…投…プハッ!」

…まーだ笑いやがる。

溜め息をひとつ吐き重ねてた体を起こしてソッポを向いた。
すると…慌てたように起き上がってきた楓が俺の袖口をキュッと摘んで。

「ごめん、怒った?」

上目使いで俺を見上げてきた。

「…怒ってねぇよ。」

フッ…と溜め息を吐いて楓に視線を戻すとそんな俺を見つめ可愛い恋人がやんわりと笑って。

「完璧だと思ってた佐古の意外な一面が見れて僕はすごく嬉しいんだ。」

「…完璧?俺が…?」

コクン、と頷く楓の手を握って引き戻して。
俺の胸にスッポリと収まる姿を見つめて…込み上げてくる愛しさに瞳を閉じる。

…さっきまでの可愛くない笑い過ぎは水に流し、柔らかな唇にそっと唇を重ねた。





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