K I R I B A N




洗い物もそこそこに楓と連れ立って奥部屋の裏口から外に出た。
言うまでもなく、俺サマからもらった野球セットを実際に使ってみるためだ。

「なんか…嬉しいかも。」

左手にはめたグローブの掌をパンパンと叩きニコニコしてる楓は…まるでスウィーツを目の前にしてる時のような満面の笑みを浮かべている。
俺の大好きな顔だ。

「これ、ちっちぇの?」

俺用にと選んだ赤い方のグローブだけど…妙にキツいような気がしてならない。

「最初はみんなキツいんだよ?使ってくうちに馴染むから大丈夫!」

相変わらずのニコニコ顔を見ながら今の楓の言葉を復唱。

「最初キツくて…ヤってくうちに馴染むんだ?…それってなんかエロくねぇ?」

口の端を上げてそう言う俺を見つめて楓が苦笑いをして。

「佐古…最近、柊みたいな下ネタばっかりだよね?」

…絶句。

この俺が、あの筋肉野郎と同じレベルだって!?

「ちょっ…待て、楓!」

「ほら、投げるから佐古ちょっと下がって!」

ショックを受けてる俺を笑顔で下がらせ、楓が軽くボールを放る。




パンッ!




キャッチした時の乾いた音がすると…野球未経験者の俺でさえワクワクしてくるんだから不思議なもんだ。

「佐古ーっ!こっちに投げてーっ!」

少し離れた場所で手を振る楓の青いグローブ目掛けて…振りかぶる。




ガシャン!




…あれ…?

真っ正面の楓に向かって投げたハズのボールが…なぜだか、左側に位置する購買部奥部屋の窓ガラスを突き破っていた。

「…佐古!?」

「…おっかしいな…。」

呆然と見ていた奥部屋の裏口ドアが勢い良く開くと同時に上半身裸の俺サマが中から飛び出してきて…!?

「テメェ!イイ度胸じゃねぇかっ!!」



ゴンッ!



"グー"で頭を思い切りぶん殴られた。





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